付加価値の高い製品づくりを目指したい
【役員インタビューシリーズ】
インタビューイ:タキゲン製造株式会社 技術営業部 取締役 技術営業部長 田中 貢

田中 貢(取締役 技術営業部長) 1980年入社。東京、大阪で開発や営業を担当したのち、1995年から新潟支店長、2007年からの京都支店長を経て、2010年取締役 技術営業部長に就任。現在に至る。
『あなたの倉庫』から『あなたの工場』へ対応力を高めて、 お客様の要望を形にします。
営業一筋の田中取締役技術営業部長人間関係を重んじる社風の中で、周りの人たちへの感謝の気持ちを忘れない「お客様にはタキゲンに連絡すれば必要なモノがあるいつでも創ってくれる」と思ってもらえる会社でありたいという。営業は「お客様に会い話を聞き、コミュニケーションの中から高品質の製品を開発し販売すること」と語る。

昔も今も変わらない赤白のタキゲンカーで営業へ。
昔から変わらない営業手法
営業一筋と聞きましたが、昔と今では営業の仕方は変わってきましたか?
田中 パソコンやインターネットが導入され、効率的な環境にはなってきましたが、私が入社した年前と比べて、営業スタイルはそれほど違いはありません。電話での注文、その後のFAX、今はネットで受発注の方法が加わってきて、受注処理や事務手続きが効率化されましたが、お客様から注文を受けて、伝票を発行して、必要な商品を集めて、梱包してお客様のところに発送もしくは届けて、最終的には代金をいただくという仕組みに大きな変化はありません。
入社した頃のエピソードがあれば聞かせてください。
田中 そうですね。80年代初めは社員も100名を超えた程度で営業体制や明確な販売方法も確立されていませんでした。ですから、営業担当も自ら開拓していくのが当たり前でした。そこで得意先になってくれそうな機械や部品をつくっている業界団体から名簿を入手して、片っ端から電話して、一軒一軒歩いて回ったことを覚えています。
初めて支店長になったときは、どうでしたか?
田中 15年ほど勤めた頃に、突然、新潟支店長の辞令が出ました。私なりに今までやってきた営業の仕方を、部下に同行しながら教えていったことを覚えています。また、研修などでも先輩が部下の面倒を見るOJTスタイルが多いです。支店では支店長が若手社員の生活の面倒を見て、支店長の奥さんが食事の準備をする寮制度を取り入れています。そうすることによって、支店長と社員の人間関係が深くなり、「絆」が形成されるわけです。
なるほど。営業活動における開発部門との関係について…。
田中 エリアを越えての営業は、支店間で話し合って、仕事を分担するなどして、活動しています。また、月に1回全国の支店長と開発部門が本社に集合して経営会議を行います。その会議で新製品が発表されて、各支店で営業・販売に臨むことになります。それと、製品開発に当たっては、お客様と直接交渉している営業担当が、お客様の声やニーズを吸い上げて、それを開発部門に伝えて製品開発に役立てていくようにしています。我々が頭の中だけで考えた商品は、実際には売れないことも多々あります。やはり、お客様の要望を形にした商品がヒットに繋がることが多いですね。
困った時に問合せれば、「必要な製品がある」「あるいは新しくつく ってくれる」と、思っていただけるような会社でありたい。
オリジナル製品による多品種小ロットで臨む
オリジナルやカスタマイズ製品にも注力していますが?
田中 はい。タキゲンはカタログ販売というイメージが強いですが、全体の売上の4割ほどは特注品になりますね。特注品でも標準品を少し手直ししたものもあれば、全くのオリジナル品もあります。そして、特注品を1つでも2つでも多く受注することが営業の仕事の目標でもあります。それだけ特注品は付加価値が上がって、会社としては利益率が高くなるからです。 現在のキャッチフレーズは「タキゲンはあなたの工場です。試作品・特注品をスグ創ります」ですが、最初のキャッチフレーズは「タキゲンはあなたの倉庫です。電話一本で届けます」でした。タキゲンはモノをつくって置いておき、お客様から連絡があれば必要な数だけ納めるという手法でした。それは業界では画期的なビジネスモデルだったわけです。
やはり多品種小ロット生産ということになりますか?
田中 はい。大量生産の分野は大手メーカーには叶いません。私たちは隙間産業として、お客様のニーズに合った多品種小ロットで対応してきました。お客様には、困った時にタキゲンに問合せれば「必要な製品がある」「あるいは新しくつくってくれる」と、思っていただけるような会社でありたいですし、それを目指しています。本社には情報開発部と製品設計部があります。情報開発部は、鉄道、トラック・特殊車両、太陽光発電・農業、自販機分野と、それぞれ業界別に特化しています。製品設計部は、既存製品に対しての改善・変更を行ったり、新たな分野の新製品をつくる部署になります。この6チームで、あらゆる業界の要望二答えていきます。

タキゲンが提案する新しい表面処理で、ステンレス表面をブラスト処理後に電解研磨処理を行う製法で作りあげる。 バフ研磨面同等の平滑面となり、洗浄性が良好。現場の声により製品化が進んだ。
付加価値の高い製品づくりを目指したい。
今日、鍵を使わないカードや虹彩認証方法のシステムが増えつつありますが…。
田中 当社はあくまでもハードが専門ですから、電気を使うコンピュータで解錠するソフト分野とは一線を画します。共同開発でシステムを構築することはありますが、当社が担うのは主にハードになります。電気を使って解錠するものは不具合や停電になった場合に使えませんが、鍵を開けるハードは外的要因のリスクがなく、確実性と安心感があって、最後はアナログが生きるということになるわけです。ですから、鍵を使った製品は今後も残っていくと思います。
新規業界へも積極的に参入されているようですが?
田中 2010年から着手した太陽光発電関連製品は、単管パイプに合う金具をつくってほしいという要望からスタートし、その後、太陽光発電のパネルを留める部品関連に発展し、今日では単管パイプも含めてトータルで受注するようになりました。また、農業分野は最初トマトを栽培するために必要なパーツづくりから始めました。流通していたものは、ほとんどが海外製であったため、農家の方の希望やニーズに合せてオリジナル製品を開発し販売したところ、好評を博しております。今後は種類を増やしていくのと、付加価値のある製品づくりを目指します。また、新規では医療機器や介護・福祉機器、それに輸送市場にも乗り出す意向です。例えば、大学等で研究しているiPS細胞の培養が外部に持ち出せるようになりましたので、その細胞を入れ輸送するケースの開発の話もいただいています。細胞は非常に繊細ですから、温度管理ができ、振動も防ぐ必要があるため、これから研究を重ねて万全のものを開発していければと思っています。
普段から心掛けていることを教えてください。
田中 経営理念にも掲げてある「感謝」という言葉ですね。これは大事にしたいと思っています。仕事ができてもおごる気持ちになってしまうと、駄目です。周りの人たちや協力してくれる人たちがいるから自分があるのだ、という気持ちをいつまでも持っていたいです。そして、社員の皆さんにも同じような「感謝」という気持ちを、持ち続けてほしいですね。
【役員インタビューシリーズ】
・常務取締役 古岡 弘好【お客様が理想としている製品、イメージしている製品を、当社が〝翻訳〞し具体化することがポイント】
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