「オープンしなけん」公開イベントに参加しました
品川区の歴史的・魅力的建築物の1日限りの公開イベントに参加しました。
タキゲンでは5階の多目的ホールが見学できます。
概要
品川区には歴史的・魅力的な建物が多く存在することをご存知でしょうか。
オープンしなけんは、品川区が進めている調査事業で〈歴史的・魅力的建築物〉として認められた建築物を1日限りで公開するイベントです。タキゲンも本社ビルを時間限定で11月26日(土)に公開します。また、オープンしなけんでは建築士による16種類のガイドツアーや、9つの建物で一般公開を予定しています。この機会に品川区を散策してみてはいかがでしょうか。
申込み方法
オープンしなけんのホームページからお申込みください。
※11月7日(月)締切
旧社屋
1963年に開業した(株)大和銀行五反田支店を居抜きで1972年に買取、本社屋として使用していました。東日本大震災の影響で破損したため、建替えを決意しました。高松先生とご縁があり、設計を依頼し、2014年に完成しました。
設計のコンセプトを高松先生に寄稿していただきました
高松 伸
京都大学名誉教授
工学博士/日本建築学会会員
アメリカ建築家協会(AIA)名誉会員
ドイツ建築家協会(BDA)名誉会員
英国王立建築家協会(RIBA)会員
「ひとつの大きな家」
計画過程における設計者に対するクライアントの要請はある意味極めて抽象的なものであったと言えよう。それは即ち、創業者が経営哲学として掲げるところの「三位一体の精神」即ち、「社員」「社員の家族」そして生産を司るところの「協力工場」が一体となってこそ企業の持続的な成長が可能であるという理念を建築として実現すること。それに応うるにあたり、設計者は「家」という概念的かつ具体的表徴を設定した。
それは、つまるところ会社を支え、会社によって支えられるところの全ての人々がともに暮らす「大きなひとつの家」の如き建築である。
全階ほとんどワンルームの如き開放的な平面計画、主として自然素材を用いたぬくもりに満ちた内装材の開発、手動式タテ軸回転ルーバーなどは、ややもすれば冗漫になりかねない設計過程を、「家」という表象の原点に繰り返し回帰せしめることによって見出した解法であると言ってよい。
特に、タキゲンが考案したベアリング内蔵角度設定回転軸受によって指一本で開閉角度を調整することが可能となった748枚の木質回転ルーバーは、各自が自由に光をデザインすることによって、まるで家の中で一人ひとりが思い思いに自分の場所と空間を紡ぐが如き効果を生み出す結果になった。そういう意味では第一の要請に対する極めて具体的かつ技術的な成果であったと言えよう。
竣工の日、件の回転ルーバーから洩れる光に華やぐ和服に身を包んだクライアントの一言が、今も我々の耳に木霊している。
「社員が毎日ワクワク生活できるような社屋をつくっていただきました。」
さて、「社屋」という言葉が、どうしても「家」という言葉に聞こえてしまうのは、我々の思い込みの強さの成せる業であろうか。ともあれ、優しく強く、そして時の移ろいの中でまるで光を呼吸するような建築が実現することになった。その誕生を手伝った者として、ここで営まれ、綴られるひとつの家族の物語と歴史を、今後も遠くから見守り続けていきたいものと考える。