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真実味を帯びてきた「人生100年時代」 〜いま10歳の子供の2人に1人が107歳まで生きる?〜

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国民の4人に1人が高齢者、90歳以上が200万人超の時代

70歳を古稀と呼ぶのは、中国の詩人・杜甫の漢詩の一文「人生七十古来稀なり」に由来しますが、日本人の平均年齢が男女ともに80歳を超えた現在、とても70歳を「古来稀なり」とは言えません。しかも、いま話題のリンダ・グラットンさん(ロンドン・ビジネススクール教授)の著書『LIFE SHIFT』では、驚くことに2007年に生まれた日本人の子供は2人に1人が107歳まで生きると言うのです。多くの人が「そんな馬鹿な」と思うのではないでしょうか。しかし、データを調べてみると、まんざらあり得ない話でもなさそうです。

総務省が先ごろ発表した資料によると、日本の総人口は21万人減っているのに、高齢者(65歳以上)は57万人増えて、平成29年9月現在で3,514万人になっています。総人口に占める割合は27.7%で、国民の4人に1人が65歳以上という社会になっています。70歳以上の人口は19.9%を占め、90歳以上も200万人を超えています。もちろん、これら全ての数字が統計史上で最高の数値になっています。そして100歳以上の人口は6万5,692人まで増えていますから、まさに超高齢化社会と言えるでしょう。

これは日本だけの話ではありません。アメリカやカナダ、イタリア、フランスなども同じような長寿化傾向が見られ、2007年に生まれた子供たちは104歳まで生きる確率が50%あるそうです。日本が抱える問題は、世界の先進国に共通した課題なのです。

その昔、ある政治家が「50、60、花なら蕾。70、80、働き盛り。90になって迎えが来たら、100まで待てと追い返せ」と言いましたが、政治に限らず近い将来、100歳まで生きるのが当たり前になる時代が来るのかもしれません。

就労者人口の11.7%が高齢者という現実が物語るもの

長寿は古来、どの民族でもめでたいこととされ、人びとの願いでもありました。しかし今、「人生100年時代」と聞いて、私たちは幸福感を覚えるでしょうか? 多くの人は幸福ではなく不安感に襲われるのではないでしょうか。なぜなら、現在の社会システムは、「人生100年時代」を支えるのに十分ではない、多くの人がそう思っているからです。医療や介護、そして年金の問題は、100歳まで生きるのに不安がある、そう思っているからです。

現在、日本の就労者人口は6,563万人で、そのうち770万人(11.7%)が高齢者です。この数字を、「高齢者が生き甲斐をもって元気に働く社会」と見るのか、「年金だけでは足りないから働く社会」と見るのか、その違いはなかなかに深刻です。同様のことはヨーロッパでも顕著で、高齢化が進むドイツでは、年金の不足分を補うために働く高齢者が増えていると言われます。アジアでは韓国の高齢者問題が非常に深刻になっています。

65歳でリタイアして、以後は年金生活というのが日本の多数派でしょうが、仮に人生100年とすれば、65歳でリタイアして100歳まで年金をもらう、それはシステムからも無理な話です。さらに厄介なことに、この問題を解決する方法は容易に見つからないのです。

政府はこの秋、「人生100年時代構想会議」を発足し、「人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策」を模索し始めましたが、いまの時代の厄介なところは政策や構想より現実が先を走ることですから、問題解決は至難といえます。

私たちの世代は、いまのシステムで大丈夫かもしれません。しかし、子供たち孫たちの世代は大きな困難に直面するでしょう。そのために何ができるか、私たちの課題です。