
情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
まずは女性リーダー30%の達成へ 〜ジェンダーギャップ指数で114位と評価された日本の男女格差〜
「健康」は1位、「政治への参加」123位というギャップ
国が推進する男女共同参画では、平成15年に「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」ことが目標に掲げられ、以後15年様々な取組みを進めてきました。しかし、努力をしても評価が下がるという残念な現象が起きています。毎年、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」(2017年版)で日本はまた順位を落とし、144カ国中で114位とランクづけされました。
この指数は、「経済への参加」「教育」「健康」「政治への参加」の4つの分野で、男女の格差がどれだけ少ないか、それを基準として数値を決めています。
日本は「健康」では世界1位です。病気になった時、男性を優先的に治療するなど日本では考えられません。また「教育」は74位ですが、数値の差は少なく、大学や大学院などの高等教育で女性の比率が少ないことが順位を下げています。この「健康」と「教育」だけを見れば、日本は男女の格差が大きいと指摘されることもないでしょう。
問題は、「経済への参加」(114位)、そして「政治への参加」(123位)です。内閣府は男女共同参画における「指導的地位」の定義を、議会の議員、企業などでは課長相当職以上、他には専門性の高い職業としています。しかし、女性の割合がすでに30%を超えているのは、国の審議会等委員と薬剤師だけ、国会議員も都道府県議会議員も民間企業(従業員100人以上)の課長相当職でも、まだ30%には遠く及ばないのが現状です。
その結果、日本が食文化やおもてなし文化、治安の良さなどをアピールしても、世界の国々からは「男女格差の大きい社会」と見られてしまう。それは大きな問題でしょう。
積極的に格差を縮めるアファーマティブ・アクションの導入も
ジェンダーギャップ指数で上位にランクされている国々も、最初から格差が少なかったわけではありません。また、いまも格差がゼロではありません。さらに言えば、日本が意識的に女性を差別したり、格差を広げているわけでもありません。過去数十年にわたり、世界の国々は男女の格差を少なくするよう多くの努力をしてきましたが、日本は比較的に認識が甘く、その動きに出遅れてしまった。そういうことではないでしょうか。
例えば、ノルウェーでは、法律を改正して国営企業や民間の上場企業では取締役会の女性比率を40%以上とすることにしました。違反すれば解散もあります。こうした強制的な措置をアファーマティブ・アクションと言います。かつてアメリカでも黒人の大学進学率を高めるため、合格者数に一定の枠を設けましたが、自然には縮まらない格差を積極的な措置で解消することも、世界の国々では過渡的に採用されています。
またフランスでは、地方選挙で男女がペアで立候補する制度を導入しました。当選は男女2人ですから、結果的に議員数も男女が同数になります。さらには女性議員が子育てで活動停止にならないよう、乳幼児を同伴して議会に出席することを認める国も増えてきています。アメリカでも、女性上院議員が生後10日の赤ちゃんを同伴して投票に参加したことが最近報道されました。下院でも子どもの同伴は認められています。
社会のリアリティを反映し、ニーズに応えるには、男女双方の意見を取入れることは欠かせません。個々の家庭では、日本もそうなっているはず(むしろ女性の意見が強いと感じます)。政治や企業だけが違っている、それはやはり不自然なことでしょう。
影響力は3割から
10%前後では、ただの少数派
組織内の少数派である人たちも、その構成比率が30%を超えると、もうマイノリティではなくなり組織の意思決定に影響を与えるという理論がある。「黄金の3割」とか「クリティカル・マス」と呼ばれる。だから、国の目標も、女性リーダーの比率をまずは30%以上にすること。いまの10%では影響力にならない、と。