情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。

紙が消え、すべてが電子化する時代 〜ビジネスでも帳票類から決済方法まで、紙からデジタルへ〜

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ビジネスの電子化は、安全性や生産性の向上につながるか

arekore_2歴史には、科学や技術の進化にともない、短期間に媒体や表現手段が大きく変化する時期があります。例えば、戦後から高度経済成長にかけての日本には、「電化」の波が押し寄せました。洗濯や掃除などに電化製品が導入され、家庭の主婦が毎日の手作業から解放されました。裁縫にはミシンが、ご飯炊きには電気炊飯器が登場しました。いまでは当たり前のことですが、当時はすべてが手作業、手仕事だったことに改めて驚きます。

そして、ここ20年ほどは、電化ではなく「電子」化の時代になりました。Net化と言ってもいいでしょう。手紙はすっかりE-mailになり、写真は撮影も保存もデジタルです。交通機関の切符はSuicaやPASMOに代わり、新聞もスマホで読むのが普通になりました。雑誌、書籍も次々に電子化されています。もちろん紙が消えたわけではないし、最近は美文字ブームもあって、手書きの味わいが見直されています。しかし、時代の波は電子化です。

電子化とは、ペーパーレスでもあります。1980〜90年代には、「オフィスのOA化でペーパーレスの時代になる」と言われましたが(実際には紙の消費は増えた)、あれから数十年が過ぎ、ビジネスの分野でも「紙から電子へ」の流れは確実に進んでいます。

ビジネスでは、取引先への発注がメールになり、事務に必要な各種の帳票類が電子化されるだけでなく、株券(上場のものだけ)も電子化されているし、決済方法にも従来の紙媒体を使った手形の他に、ネットで処理する「電子記録債権」(通称、でんさい)なども登場してきました。電子化の結果、株券や手形の紛失、盗難、偽造などがなくなり、事務処理の手間も減るのであれば、それは安全性と生産性の向上にもつながる話です。

紙と電子、それぞれの長所と短所を見比べて選択できる

株券や手形といっても一般には縁が薄く、株券電子化とか「でんさい」と聞いてもピンとこない話でしょう。総務省統計局のデータによると、貯蓄が1,000万円以下の世帯では、貯蓄に有価証券(株式や国債など)が占める割合は5%ほど。また、会社で経理担当でもなければ手形を振り出したり受けとったりすることはなく、「手形に代わってでんさいだ」と聞いても意味不明でしょう。ただ、こういう動きもあると知ることも大切です。

手形は、支払う金額や期日などを記載した用紙を取引先に渡し、期日がくれば相手はそれを現金化できるというシステムです。期日までに金額を用意すればいいので支払う側には余裕ができますが、受けとる側は期日までの資金繰りで難儀することもあります。用紙は紙なので、どこかに紛失した、盗まれたというリスクもあります。他にも、印紙代とか送料、事務の手間なども、小さいながらデメリットと見ることもできるでしょう。

電子記録債権は、企業の間で手形のやりとりをする代わりに、「でんさいネット」と呼ばれるプラットフォームに取引金融機関を通じて支払い金額や期日を書き込む(記録する)ことで、期日になれば自動的に支払いと受け取りが完了するシステムです。すべての記録が残る、印紙代が不要(手数料は発生)、紛失や盗難のリスクなしなどが利点です。2013年に運用が始まり、2016年には扱われた金額が約11兆1,700億円になっています。

電子だから良い、紙だから不便というわけではありません。電子にも紙にも、それぞれのメリット、デメリットがあります。その長短と自社の都合を照らし合わせ、どういう方法がベターなのか考える。電子化は、その選択の幅を広げてくれる流れなのでしょう。