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WHOが「ゲーム障害」を疾病と認定 「ゲームが止められない」のは意志ではなく病気のせい?

Gaming game play video on tv or monitor. Gamer concept.

すべては諸刃の剣、便利で楽しい世界も悲劇と背中合せ

arekore2子供の頃、親から、テレビばかり観てちゃダメと叱られ、漫画を読みすぎないようにと注意された経験は誰にもあると思います。ヒトは楽しいことに興味を引かれ、安易な方へと行動が流れていく傾向があります。しかし、その“程度”がホドホドであれば目くじらを立てる必要もありません。問題なのは、どっぷり浸かって、度を越した場合です。

いま、インターネット、あるいはネットを利用したオンラインゲームの世界で、多くの人びとがどっぷり浸かる現象が起きています。国やさまざまな研究機関が行なう実態調査では、最近になるほどネットやゲームへの依存度合が深まり、さらには低年齢化し、健康や仕事、学業にも深刻な影響が出てきていることが報じられています。

そして今年6月、世界保健機関(WHO)は「国際疾病分類」を28年ぶりに改訂し、ゲームに熱中して止められなくなった症状を「ゲーム障害(Gaming Disorder)」と命名して加えました。本人の意志の弱さではなく、治療が必要な病気であると認定されたのです。

ゲーム障害とは、ゲームをしたい衝動が抑えられず、何をさておきゲームを優先する。その結果、健康を損なうだけでなく、日常生活も崩壊し、家族や社会との関係、仕事、学業などに重大な支障が起きてしまうことを言います。ゲーム障害と診断されるのは、こうした状況が12ヶ月以上続いた場合ですが、家族とすれば、数ヶ月でも問題でしょう。

インターネットが一般家庭に普及しはじめて20数年、いまではオンラインで遊べるゲームもたくさんあります。ネットはとても便利で、ゲームも楽しい世界ですが、すべてのものは「諸刃の剣」、自制心を失うと、時として悲劇を生むことになります。

9歳児の約66%、2歳児でも約28%がネットを使う時代に

厚生労働省が2014年に行なった調査では、ネット依存の傾向がある人は、成人で約421万人、中高生では約52万人となっていました。そのうちどのくらいの割合が「ゲーム障害」と呼べるのか、その推計はないようですが、ネットに依存する人の多くがゲームや動画にはまっているようなので、“予備軍”の数はすでに少なくはないようです。

また、やはり厚生労働省が2017年に全国の中高生を対象に行なった調査(103校、約6万4,000人から回答)では、ネット依存の疑いが強い高校生は16.0%(12年度は9.4%)、中学生は12.4%(同6.0%)いて、中学、高校を合せると平均14.2%、7人に1人がネット依存の疑いが強いとされています。

さらに依存か否かの判断レベルを一段下げると約25%が該当しました。中高生の4人に1人は、かなりネットにはまっているのです。調査では、高校2年生の53.3%がネットの使いすぎでの成績低下を自覚しており、50.5%は居眠りをすると回答しています。

NHKが6月に放送した番組では、1日に20時間もゲームを続ける青年、恋愛ゲームに70万円も課金した女性の実態が取り上げられ、ゲーム依存の怖さが紹介されていました。また、日本で初めてネット依存外来を設立した病院の医師は、ネット依存を訴える患者の脳内では、アルコール依存症患者などと同じような現象がみられると指摘しています。このレベルまでになると、やはりWHOの判断のとおり、治療が必要な病気なのかもしれません。

昨年の内閣府の調査では、9歳児の約66%がインターネットを使い、2歳児も約28%が使っています。そういう時代に、ネットやゲームとどう付き合っていくか。深刻です。