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運動不足の経済損失は7兆円!? 毎年5万人が運動不足の影響で死亡との推計も

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若い女性ほど運動習慣なし。20〜29歳では約9割が体を動かさない

arekore2運動不足が、世界的に深刻な問題になってきました。

世界保健機関(WHO)は昨年9月、世界の成人の4人に1人に相当する14億人が運動不足だと発表しました。その傾向はアメリカやイギリスを含む高所得国で著しく、2001年に32%だった高所得国の運動不足人口は2016年には37%にまで増えたと指摘しています。なお、同期間に低所得国の運動不足人口は約16%で横ばいだったとのこと。

日本も例外ではなく、「国民健康・栄養調査」(平成29年度)によれば、「運動習慣のある者」、つまり「1回30分以上の運動を週2回以上のペースで1年以上続けている者」は男性で35.9%、女性では28.6%でした。おおよそ男性の3人に2人、女性の4人に3人は運動習慣(スポーツではなく体を動かすだけでOK)がないという結果でした。

特に若い女性の運動不足は深刻で、60〜69歳で29.6%、70歳以上で42.3%の女性に運動習慣があるのに、20〜29歳ではわずかに11.6%、9割近くが体を動かしていないのです。スポーツ庁の調査や女性雑誌のアンケートでも似たような結果が出ています。

WHOは、世界中に運動不足が広がることで肥満が増加し、2025年にはBMI35以上の肥満人口が世界で27億人(3人に1人以上)に達するだろうと推計しています。

面白いことに、日本の女性の傾向は逆で、BMI18.5以下の痩せた人が20代から50代の各世代で10%を超え、20代に限れば21.7%です。(BMI18.5とは、身長160cmなら約47kg)。痩せていて、運動もしないとなれば、骨が脆弱になるので骨折の危険性が高まり、高齢に達した時には骨粗しょう症になってしまう危険性も高いといわれています。

子どもたちの体力・運動能力は昭和60年以降に低下を始めた

イギリスの医学誌に2016年に掲載された研究論文では、日常的な運動不足が原因となるさまざまな健康問題の結果、世界で年間に約7兆円の経済損失があると指摘され、話題になりました。損失を過小評価している、実際はもっと多いとの意見もありました。

厚生労働省は、運動不足を喫煙や高血圧とならぶ健康への危険因子とし、とくに循環器系の疾患への影響が大きく、毎年5万人が死亡していると推計しています。

しかし運動不足の問題は、一朝一夕に解決できるものではありません。例えば、文部科学省は昭和39年から子どもたちの体力・運動能力を調べていますが、昭和39年から50年あたりは運動能力が向上する傾向にあり、昭和50年から60年は横ばい、そして昭和60年以降に運動能力が低下しだしたと指摘しています。すでに数十年の歴史があるのです。

今では、靴のひもを結べない、スキップができないなど体を上手にコントロールできない、リズムをとって体を動かすことができない子どもたちが増えているともいいます。もっとも少年野球やサッカー、スポーツクラブで運動をする子どもも少なくなく、文部科学省は、運動をする子どもとしない子どもの二極化が進んでいると分析しています。

子どもの頃から運動をせず大人になった人たちに、急に運動しろと言っても容易には動きません。まず一人ひとりが運動不足の怖さを自覚することから始め、毎日歩く、ラジオ体操をするなど身近なところから少しずつ体を動かしていくしかありません。

平均寿命は過去最高を記録していますが、それを支えているのは明治〜昭和ひと桁の人たちです。運動不足世代が高齢者になった時、どんな変化が待っているのでしょうか?