情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。

年間100万人近くががんになる時代 〜複数のがん要因を除けばリスクは大幅に低下する〜

2016年に新しくがんと診断された数は全国99万5132例

2016年1月、国が国内のがんの罹患や診療に関する情報をデータベースに記録して保存することを定めた「がん登録推進法」が施行され、今年1月に「全国がん登録」の集計結果が初めて報告されました。こうしたデータは多くの場合、喜ばしい内容ではありませんが、統計をどう読み、どう解釈するかで受け止め方が変わることも確かです。

初の「全国がん登録」によれば、2016年に新しくがんと診断された数は、全国で99万5132例(男性56万6575例、女性42万8499例、性別不明58例)でした。そして健康に関するデータには地域の差がつきもので、人口10万人当たりでみると最も罹患者が多かったのが長崎県(454.9人)、次いで秋田県(446.3人)、香川県(436.7人)となっています。

新規罹患者数ワースト10には前記3県の他に北海道、宮崎県、愛媛県、鳥取県、青森県、福岡県、佐賀県が入っており、東北南部から関東、中部、関西からはワースト10入りがありません。ちなみに最も少ないのは沖縄県(人口10万人当たり356.3人)、次いで愛知県(同367.5人)、長野県(同367.6人)となっています。

関連して気になるのは、AYA世代でのがんが増えていると国立がん研究センターが指摘していることです。AYAとは、Adolescent and Young Adultの略で、青年期から若年成人層を指し、普通、15歳から39歳までの世代をいいます。同センターの2018年発表では、2009〜2011年の間に15〜19歳では人口10万人当たり14.2人ががんに罹患し、20代では同31.1人、30代では91.1人となっています。これを日本全体の人口に当てはめると、年間にがんと診断される15歳〜39歳の数は2万1400例と推計されるといいます。

がん要因上位は、喫煙、感染、飲酒、塩分摂取、過体重・肥満

こうしたデータに接した時は、あまり悲観的に受けとらずポジティブに解釈することが大事です。いまの日本では2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死亡すると言われますが、逆に言えば2人に1人はがんにならないし、3人に2人はがんでは死なないのです。地域別の新規がん罹患者数をみても、多少の差はあれ、全国どこにでもがんになる人はいます。最多の長崎県で年に人口10万人当たり455人が新しくがんになるとしても、残りの9万9000人以上はがんにならない。あまり数字を気にせず(難しいけれど)、大らかな気持ちで暮らし、しかし健康づくりには配慮する、それが一番ではないでしょうか。

国立がん研究センターが「科学的根拠に基づくがん予防」を勧めています。日本人のがん要因の1位は男性の場合、「喫煙」の29.7%です(女性は5%)。ふだん「タバコを止めたってがんにならないとは限らない」とひねくれたことを言う人も、病院でレントゲンを撮って、医者から「もしかすると……」と脅されると、「先生っ、やっぱりタバコ止めた方がいいでしょうか?」などと自分から言い出すのが常です。要因の2位は「感染」(22.8%)で3位が「飲酒」の9%(女性は2.5%)、4位が「塩分摂取」1.9%(女性は1.2%)となっており、その他は1%以下ですが、中では「過体重・肥満」が0.8%と高めです。

同センターによると、これらの予防を全部実践した場合、実践項目が0あるいは1の人に比べて、がんに罹患するリスクは男性で43%、女性では37%低くなるといいます。

こころの持ち方を穏やかに、ポジティブに。そして食事や運動も心がける。今回の「全国がん登録」の結果で沖縄県が罹患者数最少だったのも、そこに理由があるのではないでしょうか。