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平成30年で日本社会は多様化したか 〜違いや変化には寛大だが、個人の選択はまだ保守的〜

変わる家族の形。2015年の国勢調査では「単独」が34.5%で最多

今年2月、皇太子殿下が記者会見で、平成とはどのような時代だったとお考えでしょうかとの質問に対し、「平成は、人々の生活様式や価値観が多様化した時代とも言えると思います」とお答えになったのが印象的でした。日本はまだまだ諸外国に比べて多様性が乏しく、自分たちと異なる生き方や考え方を受け入れるのが苦手だと言われます。では日本の社会が均一性や均質性に満ちているのかとなると、それもちょっと疑問です。

在留外国人の数は昨年末で273万1,093人(法務省のデータ)、欧米に比べればまだまだ少ないのですが、人口比で約2%は過去最高です。その多くは大都市圏に暮らしていて、都心でコンビニやファストフード店に入れば、従業員はほぼ外国人という光景には多くの人が慣れっこになっています。訪日外国人も昨年、3,000万人を突破しました。

しかし、外国人が増えることが多様性ではありません。自分たちが「スタンダード」だと思ってきた生き方や価値観が、徐々に曖昧になり多数派ではなくなりつつある。それを認め、寛容になることが大事です。選択肢の多い社会は、誰もが住みやすいはずです。

過去数十年で最も変化したのは「家族の形」かもしれません。国勢調査のデータを見ると、1980年には「夫婦と子ども」という世帯が42.1%で中心的でしたが、2015年には26.9%にまで減り、一番多くなったのは「単独」の34.5%です。一人暮らしの高齢者が増えただけでなく、結婚や子どもに関する考え方が多様化した結果でもあります。

元厚労省事務次官の村木厚子さんは雑誌の対談で、お父さんがしっかり稼ぎ、お母さんが家庭を守り、子どもが2人という家庭を基準に役所は政策を考えてきたが、それは限界にきていると語っています。多様性は外からではなく、足下から広がっているのです。

夫婦別姓に賛成が51%、しかし自分は同じ姓を選ぶが73%

多様性の議論で話題になるテーマの一つが夫婦別姓です。2015年に毎日新聞が行った世論調査では、夫婦別姓に賛成は51%、反対は36%でした。しかし、面白いことに同じ調査で、夫婦別姓が認められた場合でも夫婦で同じ姓を選ぶと答えた人が73%で、別々の姓を選ぶは13%だけでした。つまり制度として夫婦別姓は認めるが、自分たちの選択は同姓というわけで、今の日本人の多様性への意識が反映されているようにも思えます。

微妙なテーマはLGBT、つまり性的マイノリティをめぐる多様性の問題です。アメリカやイギリスなどは数十年前まで同性愛は違法で、いまも強硬に反対する人たちがいることは知られています。その点、日本は戦国武将の衆道(武士同士の男色)が有名だし、今でもゲイを公言するタレントが何人もテレビに出ているなど、比較的寛大に思えます。

大手広告会社の昨年の調査では、国内でLGBTに該当する人は8.9%(2012年は5.2%、15年は7.6%)でした。社会がLGBTに寛容になるにつれてカミングアウトする人が増えているのは確かですが、それでも同調査では「職場の同僚(上司・部下含む)へのカミングアウト」については50.7%が抵抗ありと答え、抵抗がない人は21.1%でした。夫婦別姓と同じく、LGBTは認めるけれど身近にいると驚いてしまう人が多くいるからかもしれません。

環境問題にNIMBY(ニンビー)という言葉があります。ゴミ処理場や埋立地の必要性は認めるが、うちの近くは嫌だ(Not In My Back Yard)という感情のことです。同じように、多様性は必要だし、認める。しかし、まだまだ自分は慣れ親しんだ「スタンダード」から抜けられない。もちろんそれも一つの多様性です。やはり難しいテーマです。