情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
頼るべきは賞味期限より自分の五感 世界で13億トン、日本で1700万トンも出ている食品廃棄物
生産される食料の3分の1に相当する量が捨てられる
冷蔵庫を開けた時、賞味期限を過ぎた食品を見つけたら、どうしていますか? 賞味期限とは、品質が保持され、美味しく食べられる期限を示すものですから、過ぎたから食べられないわけではありません。もし、その食品が豆腐なら、少しちぎって口に入れ、自分の舌で酸っぱくないか、品質が劣化していないかを確認して食べるかどうかを決める。それが正しい判断の仕方ではないでしょうか。もちろん豆腐でなくても同じこと。賞味期限の表示が始まる前は、誰もがそうやって自分の五感に頼って判断していました。
しかし、こうした品質表示が導入されると、いつしかそれが過大評価され、「期限切れ食品=食べるに適さない」とみなされ始めます。それがすべての原因ではありませんが、いま日本では年間に約1700万トンもの食品廃棄物が出され、そのうちの500〜800万トンはまだ食べられる食品で占められています。それらの一部は飼料や肥料に利用されますが、1300万トン以上が焼却され、埋め立て処分されています。もったいない話です。
もちろん日本だけの話ではありません。国連食糧農業機関(FAO)によれば、いま世界中で出される食品廃棄物は約13億トン、なんと生産される食料の3分の1に相当する膨大な量です。一方では、アフリカやアジアを中心に約8億7000万人が飢餓状態にあり、捨てられている13億トンの半分があれば飢餓状態の人びとを救えるといいます。
世界全体で食料援助に使われている食品の量は一年約400万トンですから、日本国内で捨てられている食品を提供できればすべて賄えます。また日本のコメの収穫量は年間に約850万トン、いかに日本の食品廃棄物が大量であるかがこれらの比較からもわかります。
賞味期限切れ食品を30〜40%引きで売るスーパー登場
今年に入り、海外からも賞味期限をめぐる興味深いニュースが届いています。
まずフランスでは、全国の大型スーパーを対象に、売れ残った食品の廃棄を禁止し、生活困窮者に食品を配給している慈善団体へ寄付することを義務づける法律が成立しました。違反すると、そのたびに50万円近い罰金が科せられます。この法律を成立させたフランスでは、年間に700万トンほどの食品廃棄物が出されているということです。
デンマークのコペンハーゲンでは今年2月、世界で初めて賞味期限の切れた食品を扱うスーパーマーケットが誕生して人気になっているというニュースがありました。繰り返しますが、賞味期限が過ぎても食べられないわけではありません。いくぶん品質や風味に劣化がある可能性はありますが、少々期限を過ぎても食べるには問題ない程度です。そんな賞味期限切れの商品を、通常より30〜40%値引きして売っているというのです。
食品の生産、流通、販売を担当する企業にも、改善を求められる点はあります。通常、小売店では賞味期限が3分の1以下になると食品を撤去して廃棄にします。例えば、賞味期限が製造日から6か月の場合、残り2か月を切るとそうします。これを「3分の1ルール」と言いますが、これを見直して廃棄食品を減らす工夫が求められています。もちろん、それを見直すには消費者の意識変革も欠かすことはできませんが。
消費が美徳のように言われる時代に育った現代人に、「もったいない」は死語かもしれません。しかし、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代は終わったはずです。豊かで便利ではあるけれど、浪費はしない社会をどう築くか。いま世界が模索しています。
動き出したフードレスキュー
買い方ひとつで食品ロスを減らせる
賞味期限切れが迫った食品に、値引きシールと一緒にメッセージシールを貼り、期限の迫った食品から先に買ってくれるよう呼びかける試みが東京都内の一部スーパーで始まっている。名付けて「フードレスキュー」。買い物ひとつで食品廃棄物を減らせる、社会を変えていける。それを消費者に訴える作戦である。