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喫煙率約20%って、高い? 低い? 禁煙の波は、今後ますます世界を覆う

no smoking

過去50年で50%以上も激減した日本人男性の喫煙率

smokingtime喫煙率にも先進国型と途上国型があるのを知っていますか? 先進国型の喫煙率とは、男性と女性の間に差が少なく、しかも共に低いのが特徴です。一方、男性の喫煙率が極端に高く、女性は非常に低い、それが途上国型の喫煙率です。

実際、ヨーロッパ諸国を見ると、男性の喫煙率が低めで、女性と男性の間にあまり差がありません。しかしアジアの国々では男性の喫煙率が欧米に比べると格段に高く、女性はかなり低いというケースが多い。例えば、世界保健機関(WHO)の2002年のデータでは、イギリスの男性27.0%、女性26.0%に対して韓国は男性65.1%、女性4.8%でした。まだまだ儒教思想の影響が強い韓国ですが、これほどの差は珍しい。もっとも最近は韓国の男性も40%を切るくらいまで禁煙が進んでいるようです。

では日本はどうでしょう。JTのデータを調べてみると、男性の喫煙率は1966年に83.7%もありました。それが2014年には30.3%にまで激減、いまではヨーロッパの国々に遜色ないレベルまで下がっています。女性は1966年の18.0%から2014年には9.8%に。意外なのは、昔の方が女性の喫煙率が高いことです。なんとなく、昔は女性はタバコを吸わなかったのに、最近になって吸う人がどんどん増えてきた印象があります。

しかし、「健康日本21」を推進する厚生労働省は、まだ日本の喫煙率は高いと見ており、今後は男女合わせて12%台にまで下げていきたい考えです。そのために禁煙スペースの拡大、禁煙のアピール、タバコの値上げなどが検討されているようで、愛煙家はますます肩身が狭くなるだけでなく、様々な負担を強いられることになりそうです。

本来なら脱法ハーブなどと同じ扱いでも不思議はない

タバコは15世紀末から16世紀初め、コロンブスたちが新大陸を発見した際、現地のネイティブ・アメリカン(通称インディアン)たちが吸っていた葉をヨーロッパに持ち帰り、それが世界に広がって今日に至っています。500年の歴史があります。だから喫煙が法的に禁止されることはないのですが、もしタバコが最近出てきた新しい嗜好品であったとしたら、果たしてどうなるでしょう。ガンを初め様々な病気の原因となり、ニコチンへの依存症もあるとなれば、脱法ハーブなどと同じような扱いになっても不思議はありません。

愛煙家は、タバコにもメリットがあると主張します。確かに、ニコチンにはストレスを和らげる効果があると認められています。しかし害といったら、もう次から次へといくらでも出てきます。最近では、妊婦の喫煙で胎児に大きな影響があることが再確認されました。フランスでは、ヘビースモーカーの母親から生まれた赤ちゃんが、生まれつきニコチン中毒だったという驚くべきケースもあったようです。それらを総合的に考えると、わずかのメリットのために多大なリスクを背負う必要があるのか、改めて考えさせられます。

データによると、喫煙者の半数以上は禁煙を望んでいるといいます。またイギリスの調査では、精神状態に問題を抱えている人ほど喫煙率が高いといいます。さらにはJTによると、年収が高くなるほど喫煙率は下がるそうです。つまり多くの人はタバコを止めたいのに、仕事のストレスや精神的なトラブルから逃れられず、金銭的にも追われて、ついついタバコに手を伸ばしているのでしょうか。禁煙! 禁煙!と叫んで追いつめるだけでなく、もっと心穏やかに暮らせる社会をつくることも「健康日本21」の課題かもしれません。