
情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
笑顔を拡げるアニマルセラピー イヌやネコと触れあうだけで気分はハッピー
動物と触れあうことで 幸福感につつまれ、自信が出る
アニマルセラピーという言葉を聞いたことがありますか? セラピードッグの存在を知っていますか? アニマルセラピーとは、主にイヌやネコ、馬、ウサギなど、触れ合うことで人が何らかの心の安らぎを得られる動物をつかって、人のストレスを軽減させ、自信を持たせ、幸せな気分にさせることを目的とした療法であり、活動です。
正確には、医療者が動物をつかって医学的な補助療法としておこなう「動物介在療法」と、特別に医療的な効果を目的とせず、人と動物とが触れ合う「動物介在活動」とに分けられます。欧米では「動物介在療法」がかなり本格的に取り入れられていますが、日本ではさまざまな規制やマナーの問題から、まだ「動物介在活動」が中心です。
しかし、「療法」であれ「活動」であれ、動物たちと接することで人がさまざまに楽しさを感じることは同じです。例えば、入院中の患者のもとに訓練されたセラピードッグを連れていくと、患者はイヌを撫でながら笑顔になり、「楽しい」という感覚に満たされます。そして、またイヌに会いたいなと思う。その時、患者の心の中ではリラックスした状態をつくる副交感神経が優位になり、幸せホルモンと呼ばれるドーパミンなども分泌されていると言います。心理的、また生理的なプラス効果はもちろん、動物と触れあうようになって患者が社交的になってきたという事例も数多く確認されています。
こうしたことは、あまり難しく考える必要はありません。例えば、夜、家に帰って玄関のドアを開けた時、まるで何年ぶりかで会ったかのように、激しく尻尾を振りながら迎えてくれる愛犬を見た経験のある人なら、心の安らぎや幸福感は理解できるはずです。
高齢化社会を背景に イヌよりネコがペットに選ばれる
アニマルセラピーといっても、もちろんイヌやネコなどの動物に特殊な能力が秘められているわけではありません。彼らと触れあうことで、人の心が和み、その結果として生理的な変化が表われ、時には健康面でも顕著な改善が見られる。つまり人に備わっている自己治癒力が、動物と触れあうことで活発になるだけのことです(ただし、動物アレルギーの人、動物に恐怖心のある人は注意が必要です)。
イヌと暮らしている人の方がストレスは少ないとか、高血圧が下がったという話も聞きます。心に傷を抱えている子供たちが動物と触れあうことで心を開くようになった、社会的に問題の多い少年たちにイヌのトレーニングをさせたら暴力行為が減った、社会復帰が早まったなど、動物と人との触れあいがもたらす効果は、昔からさまざまに語られてきました。それを学術的に体系化したのがアニマルセラピーなのでしょう。
日本ペットフード協会の推計では、ペットとして飼われるイヌは、ピーク時の2008年には1310万匹ほどでしたが、2015年には991万匹に減り、もうすぐイヌとネコが逆転すると言われています。それは善悪の問題ではありませんが、イヌよりネコを飼う理由が、高齢化で散歩が大変になる、一人暮らしで世話ができない、などであるのを知ると、ペット事情から人間社会の姿が浮き彫りになるようで考えさせられます。
人は一人では生きられない、人だけでは生きられない、と昔から言われます。人がいて、多くの動物がごく普通に周りにいる。それが本来の自然な姿でしょう。アニマルセラピーが効果を発揮するのは、そんな自然な社会が失われてきているからなのでしょうか。
初のセラピードッグはフロイトの愛犬?
診療室には常にイヌを同伴させた
夢判断などで知られる心理療法の大家フロイトは愛犬家で、心理療法をおこなう際にも診察室にイヌを同伴させていた。そして、イヌの存在が患者、とくに子供たちの心を落ち着かせることに気づいていたという。近年の研究から、フロイトが感じていたイヌの効果は正しかったことが確認されている。