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この国の“かたち”が変わる 結婚も愛よりコスパで決める時代!?

結婚も愛よりコスパで決める時代!?

2035年には男性の3人に1人が生涯未婚との予測も

P20_21_あれこれ_目次元厚生労働事務次官の村木厚子さんが数年前、ある対談でこんなことを語りました。高度経済成長期の日本では、お父さんが一所懸命に働いて稼ぎ、お母さんは家庭を守る、そして家には子供が二人いる。そういう家族の形をイメージして政策を考えてきたが、それはもう限界にきている、と。時代の変化を的確にとらえた発言だと思います。

家庭あるいは家族の形は男女が結婚するところから始まりますが、いまではここが大きく崩れてきました。『厚生労働白書』(平成25年版)では結婚に関する若者の意識を大きく取り上げていますが、1984年には「人間は結婚して初めて一人前になる」という考え方に約60%の人が賛成していました。しかし2008年には「人間は結婚するのが当たり前」には約35%しか賛成していません。結婚に対する社会的な圧力が弱まり、結婚も人生の選択肢の一つとして自由に捉える時代になってきました。悪いことではありませんが。

50歳まで一度も結婚したことのない人の割合を示す生涯未婚率は2010年で男性20.1%、女性10.6%となり、特に男性は1990年の5.6%から大幅に上昇しました。2035年には男性の3人に1人が生涯未婚で終わるようになるだろうとも予測されています。

もっとも欧米はもっと革新的で、フランスでは正式に結婚しない事実婚が2002年ですでに20.9%、さらにスウェーデンは35.4%にもなっています。3〜5組に1組のカップルが事実婚を選択しているわけです。となると婚外子も多く、フランスやスウェーデンでは50%を超え、デンマーク、イギリス、オランダ、アメリカでも40%を超えています。それらは個人の選択の自由、そして多様性を尊重する社会の反映だといえるでしょう。

35歳以上の未婚男女50%以上が「適当な相手にめぐり会わない」

気になるのは、日本の若者の意識が欧米のように結婚という形式にこだわらず、自由に生き方を選ぶのではなく、「あきらめ」のようなものが漂っていることです。

実際、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、「一生結婚するつもりはない」と答えたのは男性で10.4%、女性では8.0%です(2010年)。平均で85%以上の人は「いずれ結婚するつもり」と答えていますから、欧米とは事情が違います。

では、なぜ結婚していないのかの理由を見ると、18〜24歳では「まだ若過ぎる」「まだ必要性を感じない」が男女ともに1位と2位ですが、25〜34歳では「適当な相手にめぐり会わない」が男女ともトップの理由になり、それが35〜39歳では男性で52.2%、女性で56.4%になっています。昔のように、ある程度の歳になれば見合い話が舞い込んでくる社会ではないので、自力で探すしかありません。経済的な理由も大きく、非正規雇用で収入が少なく、結婚に踏み切れないという若者もいます。

草食系という存在から、このごろは絶食系へと深化しているようですが、未婚男性の62.2%、女性の51.6%が「交際相手なし」です。また、あるネットリサーチ企業が未婚男女に質問したところ、結婚しない理由に「メリットを感じられない」「無駄だから」「一人の方が自由だから」「コスパが悪い」などの答えが返ってきたそうです。

村木厚子さんの言うように、かつての家族の形が崩れだし、それは政策やビジネスモデルの変化をも余儀なくします。しかし、「コスパが悪い」とまで言われると、結婚もビジネスの一種になってきたのかなと、ちょっと寂しい思いがしますね。