情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
小さな食事の差で、大きな影響が出る 〜食事バランスの違いで死亡リスクの差が最大18%〜
脳疾患では、主菜のバランスの良し悪しで最大28%もの差が
食事のバランスが大事なことは、誰もが分かっています。しかし、食生活のバランスの善し悪しで、死亡リスクにも大きな影響が出ることも知っていますか? じつはこれまで食生活と死亡リスクとの関連を具体的に検証したデータはなかったそうですが、先ごろ、国立がん研究センターなどが全国の約10万人の男女を対象に、20年以上にわたって追跡調査した結果が発表されたのです。その内容は、驚きとともに、納得! でした。
同センターを中心とした研究グループは、まず1990年から98年にかけて全国の約10万人の男女を選び(調査開始時に40〜69歳)、彼らの食生活と健康をチェックしました。そして、その10万人の中から循環器疾患でもガンでも肝疾患でもない8万人を選び出し、さらに15年間の調査を続けて、食生活と死亡との関連をチェックしたのです。
調査では、食事のバランスを2005年に厚生労働省と農林水産省が作成した「食事バランスガイド」に従って採点し、得点の高い方から順に4つのグループに分けました。
すると、得点の高い(食事バランスの良い)グループほど死亡リスクが小さく、得点が低くなるにつれてリスクが高くなる傾向が見られました。もっとも得点の高いグループと最も低いグループでは、最大で18%も死亡リスクに差がありました。
特に顕著だったのは脳卒中など脳疾患で、主菜(魚や肉、卵、大豆料理など)をバランスよく食べる人とそうでない人とでは最大で28%も死亡リスクに差がありました。これまでも海外の調査では主菜と脳疾患の関連性が指摘されていましたが、今回の大規模な長期にわたる調査でも同様の結果が出て、その裏付けが取れたというわけです。
朝食を「毎日食べる」子と「全く食べない」子では学力に明確な差
食事の質やバランスが大切なのは、大人だけでなく子供も同じです。しかし、子供の場合、質やバランスを問題にする前に食事そのものが足りていないという状況もあります。もちろん全体ではありませんが。全国に広がる「子ども食堂」などが、その例です。
また、親の事情もあるのでしょうが、朝食を摂らずに学校にくる子供も少なくはなく、それが彼らの学習成績にも反映しているとなれば、やはり憂慮すべきことでしょう。
農林水産省の『食育白書』(平成27年度版)によると、朝ごはんを食べずに学校にくることがあるのは、小学校6年生で12.5%、中学校3年生では16.2%になっています。そして、学力調査テストの正答率との関連性をみると、小学校6年生の場合、国語Aでは朝食を「毎日食べている」子供の正答率が71.5%であるのに対し、「全く食べていない」子供は54.2%でした。算数Aでも、76.7%に対して58.4%で、20%近い差があります。
もちろん体力テストでも同様の差が見られますし、イライラするとか、やる気が起きないなどのチェック項目でも、朝食を食べていない子供に悪い結果が出ています。
脳の働きを支えるエネルギー源は、言うまでもなくブドウ糖です。脳は体に必要なエネルギーの約20%を消費しますが、それはもちろん食事によって補給されています。だから朝食を摂らずに学校に行くのは、燃料を入れずに車を走らせるようなものです。
昔から「医食同源」と言うように、食べることは命を養うこと。そこが乱れたら、健康に暮らせるはずがないのは道理です。まず食べる、食べさせる、そして質やバランスを整えていく。決して新奇な話ではありません。ごく常識的なことではないでしょうか。
脳に効く朝ごはんの代表は?
ご飯、納豆、豚汁、野菜サラダを
「脳トレ」などで有名な川島隆太博士が勧める「脳に効く朝ごはん」の代表例は、ご飯、納豆、豚汁、野菜サラダのセット。ご飯はブドウ糖の血中濃度を長時間保ち、長く脳にブドウ糖を供給する。そしてビタミンB群に豚肉、その分解を高めるのにネギやタマネギが効果的。リジンの補給には豆類、卵黄、乳製品を。