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世界を覆いつつある肥満の波 〜太めに誇りを持つのは大切だが、健康面では不安も〜

アメリカでは成人女性の40%が肥満、約30%が過体重とも

arekore_2アメリカの有力新聞「ワシントンポスト」が2月8日、タレントの渡辺直美さんを賞賛する記事を掲載し、ちょっと注目されました。記事の趣旨は、極度に痩せた(super-skinny)女性が多い日本で、彼女は体重が同年代の女性の倍にもかかわらず、太っていることに誇りをもっている(chubby and proud)、それが素晴らしいというものです。

たしかに、体重や体型に関係なく、自分の存在を肯定的に評価し、誇りをもつのは大切なことです。しかし、日本の女性は「極度に痩せて」いるのでしょうか? むしろ徐々に太めの人が増えつつあるように思うのですが、アメリカとの比較なら話は別です。

世界保健機関(WHO)が世界179カ国の成人女性を対象に調査した結果では、世界平均のBMI値(成人女性)は25.7となっています。イメージとしては、身長160cmの女性で体重が65.8kgという感じです。BMIは肥満などをチェックする際に用いられる基準で、WHOの定義では25以上が「過体重」、30以上が「肥満」、40以上を「病的な肥満」としています。

ただ、日本人の場合、BMI25を超えると高血圧や脂質異常症などの合併症を発症する頻度が高まるので、日本肥満学会ではBMI25以上を肥満としています。

WHOの調査では、アメリカの成人女性の平均BMIは28.6で、先進国では一番高い数値になっています。またアメリカ疾病対策センター(CDC)は、成人女性の40%が「肥満」で、「過体重」の人も約30%いると報告しています。全国民の体重をもれなく計ることは無理ですから、肥満率にも調査機関によって差異はありますが、アメリカが肥満大国であることは、どの調査でも明らかです。そして、その傾向が世界的に広がっています。

イギリスは成人の60%が肥満になると国際赤十字が警告

アメリカで肥満や食生活が問題になるのは、いまに始まったことではありません。1960年代後半に米議会上院にマクガバン委員会が設置され、アメリカの食生活と健康について広範な調査が実施されました。その結果は1977年に「マクガバン・レポート」として発表され、肥満を含めた多くの病気がアメリカ人の食生活と関係していると報告されました。しかし、過去数十年、アメリカでは食の改善も肥満対策も功を奏していないようです。むしろ事態は確実に深刻化している。さまざまな調査の結果は、そう語っています。

肥満問題はアメリカだけでなく先進国の国々へも広がっています。国際赤十字社は、世界の肥満人口は15億人に達し、栄養不足人口の9億2,500万人を上回っているとし、イギリスでは2050年までに成人人口の60%が肥満になるとも警告しています。

だからといって肥満の人たちに「痩せなさい、ダイエットしなさい」と注意するのは必ずしも効果的ではないようで、最新の臨床データでは、あまり痩せなさいと言うと、それがストレスになって、肉体的にも精神的にも逆効果だと指摘されています。

加齢とともに新陳代謝のエネルギーが減り、徐々に「ぽっちゃり」になるのは自然なことで、健康的にも少し太めの方がいいという研究データもあります。そして、体重や体型に劣等感をもたず、常に自分を肯定して生きるのは間違いなく正しいことです。

平成27年の「国民健康・栄養調査」では日本女性の19.2%がBMI25を超えています。WHOの基準では「過体重」、日本の基準では「肥満」に分類される数値です。日本にも、じわりじわりと肥満の波が押し寄せています。さて、あなたはどう対応しますか。