情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。

ギャンブルも痴呆予防に効果?手足を動かし、頭を使うことが脳の活性化に

ルーレット

2025年には要介護が800万人を超すと推計

永六輔さんが『大往生』で「子供叱るな来た道だもの、年寄り笑うな行く道だもの」という言葉を紹介しています。確かに、幼い子供たちの様子を見ていると、「ああ、自分もあんなことをしたなあ」と思い当たることが多いものです。そして、六輔さんの言うように、お年寄りの様子の中には間違いなく未来の自分の姿が潜んでいるのです。

いま、残念なことに、私たちの「行く道」である高齢者の姿は明るいものではありません。厚生労働省の発表では、2015年3月で要支援・要介護の認定を受けた人が約606万人もいます。およそ国民の20人に1人(5%)です。これは凄い数字です。要介護の人が600万人なら、介護する立場の人も600万人ほど必要になるわけで、もし一人の面倒を家族二人が交代でみるなら1,200万人となります。立場はどうあれ、国民の10~15%が介護に係ることになります。すでに日本の高齢化社会はそこまできてしまった。2025年には団塊の世代が75歳を超えてくるので、要介護者は800万人を突破するとみられています。

要介護者の増加と表裏一体ですが、介護離職者も年々増えています。年間におよそ10万人、その4分の3が女性で、多くは40代後半から50代の女性です。女性の社会進出を促進して、女性が輝く社会をつくろうと政府は計画していますが、高齢化の波は彼女たちを職場から介護へと押し戻していきます。さきごろ「新三本の矢」の一つに「介護離職者ゼロ」が掲げられました。しかし、政府の推計でも2025年には介護要員が38万人も不足するとなっています。となれば家族の負担が増すのは避けられません。女性の輝く社会、若者が安心して歳をとれる社会、高齢者が健康に楽しく暮らせる社会の実現は難しくなります。

子曰く「ごろごろしているより博打でもする方がいい」

脳の活性化

いま要介護者のいない家庭でも、こうした不安は誰もが感じているはずです。昨年、内閣府の実施した国民生活に

関する世論調査でも、66.7%の人が生活に不安や悩みがあると答え、具体的な項目には「老後の生活設計(57.9%)」「自分の健康(49.7%)」「家族の健康(41.9%)」が上位に挙げられました。いわば「行く道」への不安です。

これらは国民的な大問題ですから一挙に解決できる妙策はありません。二宮尊徳(金次郎)の説いたように「積小為大」(小さなことを積み重ねて大事をなす)が大事で、介護や高齢化問題に係っている人だけでなく、「行く道」に不安を感じている私たち一人ひとりが、いまできる何かを積み重ねていく。それしか解決策はないでしょう。

ヒントになりそうな面白い話があります。パチンコや麻雀などのギャンブルが認知症の予防になり、高齢者が要介護になるのを防ぐ効果もありそうだという話です。実際、パチンコ台や麻雀卓を備えた施設を準備し、そこまで往復歩いていって遊んでもらうという試みをしているデイサービスもあります。ギャンブル依存症に繋がるのではないかと規制する動きもありますが、歩く効果、頭を使う効果は少なくないとの意見もあります。

ギャンブルの推奨ではありません。『論語』では孔子が弟子たちに「ごろごろしているより博打でもする方がいい」と説諭しています。無為よりは、何でもいいから手足を動かす、頭を使う、それが脳の活性化につながる。もちろん読書や運動、その他の高尚な趣味が一番でしょう。しかし、理想では動かないのなら、ギャンブルでもいいから手足と頭を使う方がいいのか。「行く道」を前にして不安を感じるあなたは、どう思いますか?