世界で環境中に排出されている水銀の年間量は「約8,900トン」

水銀汚染から環境と人びとの健康を保護するための初の国際条約「水銀に関する水俣条約」が今年8月16日に発効しました。条約名に「水俣」が入っているのは、水銀汚染で多くの人びとが苦しんだ水俣病に由来します。今後、締約国は水銀の採掘から貯蔵、使用、処分などすべての段階で、水銀の排出削減に取り組むことが義務づけられます。

水銀は小規模な金採掘や工業製品の加工(塩化ビニル、塩素アルカリなど)、歯科用アマルガム(合金)などに利用されていて、国連環境計画(UNEP)によれば世界で年間に3,798トン(2005年)の需要があり、環境中への排出量は最大で約8,900トンになります。

動物の体内に取り込まれる水銀量は19世紀後半から急上昇しています。水銀は、脳内に蓄積しやすい重金属で、排出されれば環境中に残留し、それを取り込んだ生物の体内にも蓄積します。少量でも危険性があり、特に胎児や乳児などが被害を受けやすいといわれます。また、2017年に国際的なNPOが行った調査では、魚を食べることの多い太平洋地域の女性の96%に水銀汚染の強い痕跡があったというデータも出ています。