
臓器に投影する手術ガイド「MIPS」

外科手術で負担となっていた医師の視野移動。それを解決したのが、プロジェクションマッピングを応用した「MIPS(ミップス)」の技術です。

「MIPS」は…
- 血管やリンパ節の位置をプロジェクションマッピングにより患部に投影する高精度な手術装置
- 医師は患部から視線を離さず執刀できるため、手術の確実性・時短を実現

患部とモニターの視線移動
現在は、患者の負担が少ないとされる低侵襲手術のガイドとして、ICG(インドシアニングリーン)と呼ばれる蛍光薬剤と、その薬剤の流れを撮影する赤外線カメラが用いられています。
ICGは、赤外線を照射すると近赤外線の蛍光を発するため、赤外線カメラで撮影すると、薬剤が流れる患者の血管や組織の位置を映像で見ることができます。また、目視が困難なガンの転移が疑われるリンパ節の位置も特定しやすくなり、正確かつ安全な手術をする手助けとなっています。
しかし、執刀医はカメラで撮影した映像をモニターで確認しなければならず、患部とモニターの頻繁な視野移動が必要で、手術時の大きな負担となっていました。

カメラとプロジェクターで臓器に蛍光映像を投影
そこで、パナソニックと京都大学が産学連携で研究し、三鷹光器により製品化されたのが、エンターテインメントなどで普及しているプロジェクションマッピングの技術を応用した世界初のリアルタイム手術ガイド「MIPS」です。
カメラで撮影した患部のICG蛍光情報を、プロジェクションマッピングによって患者の臓器に直接投影ができるもので、肉眼では見えない血管あるいはリンパ流をも映しだすことが可能です。臓器の変形や移動にもリアルタイムで追従し、映像の投影遅延時間は0.2秒以内、投影のズレは±2mm以下と、高精度を実現しています。
また、プロジェクターからの投影により明るく明瞭な術野が確保できるため、医師にとっては手術の確実性や効率性を高められます。外科手術の時間短縮は患者の出血量の低減に役立ち、また術後の生存率向上や入院短縮など、予後の生活の質の向上にも寄与すると期待されています。

これからの外科医不足に
日本では今後、外科医の数が大幅に減少すると言われており、高齢化と相まって、外科医一人あたりの負担が激増することは想像に難くありません。
「MIPS」のような医師の負担を減らす技術は、今後ますます重要になっていくと考えられます。
取材協力

三鷹光器株式会社 様
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