日本の産業や文化の発展を支える最新の技術を紹介するコーナーです。

金型へ高離型性を与える薄膜形成技術 ナノ離型膜「TIER(ティア)コート®

薄膜形成技術で離型剤が不要に。プラスチック成形加工の安定的な生産、コスト削減、作業環境改善に貢献。

プラスチック成形の問題点

近年、モバイルなどの製品の軽薄短小により、部品には小さく・薄く・高精度なプラスチック成形品が求められます。プラスチック成形品を金型から外す際に、剥がしにくいと破損したり歪んだりするため、剥がしやすくするため離型剤が使用されます。

この離型剤には材料に混ぜる内部離型剤と、金型に塗る外部離型剤があります。内部離型剤は樹脂の特性に影響を与え、特にレンズなどの光学部品では光透過性が低下する問題があります。一方で外部離型剤は頻繁な塗布が必要で、かつ均一な塗布は難しく、成形品の寸法のバラツキの原因となります。また離型剤が成形品に付着すると洗浄が必要となるため作業工数が増加したり、離型剤の塗布作業によって作業現場の環境が悪化したりするなど、製品の生産において様々な影響がありました。

金型へのナノ離型膜形成技術で離型剤が不要に

この問題に着目した東亜電化は岩手県工業技術センターらとともに金型の表面に高離型性の薄膜を形成する技術開発に着手。

金型(金属)の被膜表面に離型効果を発揮する含フッ素有機化合物と、金型とプラスチックとを接合する機能を持つトリアジンジチオールで結合させることで、優れた離型性を有する薄膜を形成することに成功しました。この技術をさらに磨いてできたのが「TIERコート」です。

被膜の高い耐久性により離型剤を使用せずに連続1カ月、5,000回以上の成形が可能に

「TIERコート」は、金型との高い密着性を実現。さらに含フッ素化合物同士を結合させることで薄膜自体の耐久性も向上しました。その結果、離型剤を一切使用せずに、1カ月以上、連続5,000回以上の透明エポキシ樹脂での成形を可能にしました。

「TIERコート」により生産性や品質が向上、作業環境も改善されるため、主にレンズ、光学フィルムやLEDメーカーなどから高い評価を得ており、プラスチック成形においてさらなる展開が期待されます。