新製品について担当者にインタビューするコーナー。活用方法を始め、開発秘話を掲載しています。

高設栽培架台の沈下を防ぐ 沈下防止用ワンタッチフランジ

開発の経緯

ー 開発の経緯を教えてください。

望月 イチゴの高設栽培用の架台は、細長く数十メートルにわたり、重心が高い位置にあるため、転倒してしまうことがあります。そのため、架台の脚となるパイプを地面に打込む方法が採用されるケースが多いのですが、ハウスを建てる際に整地をしても、埋立て地や田園跡地だと地盤が緩い場合があり、年月とともに沈下する問題が発生していました。そのため、沈下防止用のフランジの開発が求められました。

栽培方法について

ー イチゴは地面に植わっているものだと思っていましたが、高設栽培が主流なのですか?

望月 農業全般に言えることですが、しゃがんだり腰を曲げたりすることは体への負担が大きくなります。
高設栽培なら、架台が腰の高さまであり、立ったままの作業となるため、栽培の管理や収穫がしやすくなります。また、イチゴ同士が擦れて傷つくことが少なくなり、花房が垂れる品種でもイチゴが地面につかず、見た目のきれいさを保てます。そして、観光農園の来場者にとってもイチゴ狩りがしやすいといったメリットがあります。

材料と加工方法

ー 材料と加工方法はどうやって決めましたか?

望月 他社製品で金属製の類似品がありましたが、パイプを固定するために行うねじ締め作業が電動工具で施工しにくいといった問題がありました。ローコストで大量生産を行うことができること、そしてこの問題を解決するためには製作方法を見直し、樹脂の成型品にすることにしました。

金属製のフランジだと取付け穴の位置が低いため、
電動ドライバーが入りにくく、ねじ締めしづらい

形状について

ー パーツを2つに分けたのはなぜですか?

望月 架台は設置するだけで済むに越したことはありませんが、沈下が発生した際に元の位置まで戻して固定しなくてはなりません。フランジを通すとなると、架台を解体する作業が発生し、時間も労力もかかります。
 それを防ぐためにも、2個1セットのセパレートタイプにして栽培架台に簡単に後付けできるようにしました。新たにイチゴ栽培を開始する農家様だけでなく、すでに高設架台を設置されている方にもご提案できると考えました。

設計の工夫

ー 設計する上で工夫した点はありますか?

望月 AとBの形状(オス・メスなど)で分けてしまうと、それぞれの金型を用意しなければなりません。また、納品時の混入リスク(誤ってAとAが納品される)も考えられます。
 そこで、右と左が同じ2個1セットの形状にすることにしました。同じ金型で製作できる分、数を多く作れて低コスト、混入リスクも避けられて、在庫の管理がしやすくなります。また、お客様が使用される際に左右を気にせず作業ができます。

苦労した点

ー 開発する上での苦労話をお聞かせください。

望月 2個1セットの製品なので、はめ合せる方法をどうするか悩みました。横からドリル付タッピングねじを打ってパイプとはめ合せるとはいえ、差込んですぐ抜けてしまうと使いづらくなってしまいます。そのためラッチ機構を施し、より密着するよう工夫し、作業時、確実にはまったことを実感できるようクリック感にもこだわりました。

ラッチの位置をどこにするべきかも悩みどころでした。当初は外側にする計画もありましたが、屋外で使用するため、その部分にゴミが溜まることや、作業中に引っ掛けてしまうことが想定されました。そこで、ラッチを内側にすればその心配は解消され、表面がすっきりしたことにより金型もシンプルになり、製作しやすくなりました。

中面の凹凸でズレ・ねじれを抑制

強度面においては、一体型と異なり分離式のため、過重負荷時の強度が求められました。上から下にかかる荷重によるズレ、左右にかかるねじれの発生を想定して、それらをどのように解決していくかが課題でした。まず、ズレ・ねじれに対する強度を持たせるため、中面に三角形の凸凹を施し、ラッチ部分を細長い四角にしました。水遣りや肥料、成長により重さが増していくため、想定される荷重も考慮しています。


また、成型後の熱収縮による変形を全て予測できず、設計と異なった仕上がりとなってしまったこともありました。例えば、ラッチのツメの掛かりが甘く、挿入時のクリック感が思うように出せなかったり、パイプに取付けた際、想定よりも締りがきつく、設置しても下までするりと降りずに引っ掛かってしまうという事象が起こりました。当初はお客様より「引っ掛かりがあっても、手で押し下げればよいので使用上問題はない」とご意見をいただいておりましたが、数個ならばまだしも、ハウス1棟あたり1,000個ほど使用するため、施工性を重視すべきと判断。試作を重ね、するすると自重で落下するように金型を調整しました。常に作業者の立場になり考え、製品開発を行いました。

心掛けていること

ー 望月さんが営業活動で心掛けていることを教えてください。

望月 「明るく、元気よく!」をモットーに営業活動をしています。特に私は今年から営業に配属されて初対面のお客様ばかりなので、事前によく調べて訪問するようにしています。先輩のアドバイスを基に、製品サンプルやパンフレットを持参して、話題を作りニーズをキャッチできるように心掛けています。また、日々の業務の中で問合せが多数寄せられますので、一つひとつ真摯に対応して、営業マンとしての力をつけていきたいです。困ったことがありましたら、ぜひお問合せください。

製品情報

[CP-684]沈下防止用ワンタッチフランジ

イチゴの高設栽培架台をしっかり固定

イチゴなどの栽培架台の沈下を防止します。 
φ22.2パイプに適用。
分割式のため、後付けができます。
ドリル付タッピングねじでパイプに固定できます。(M4×13推奨)
ドリル付タッピングねじの締込み位置が高いため、電動ドリルで施工できます。
接地面に釘を打込むことにより、沈下や横ズレを防止します。


仕様
・材  質:ポリプロピレン(PP)
・適用パイプ:φ22.2

納期
・標準品…納期お問合せください

備考
・パイプ連結はM4X13 ドリル付
 タッピングねじをご利用ください。
・1セット2 個入。

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