新製品について担当者にインタビューするコーナー。活用方法を始め、開発秘話を掲載しています。

温湯管専用の片つば車輪の開発

福岡支店 八木

コストと機能に優れた温湯管レール用車輪がなく開発

ー 温湯管とはどのようなものなのでしょうか?

八木 農業用ハウスは冬場でも効率よく作物を収穫するために、温度を一定に保つことが求められます。ハウス内にパイプを張り巡らし、その中にお湯を通すことによって、全体を穏やかに温めていく暖房システムがあります。そのパイプを温湯管と言います。

農業先進国として知られるオランダでは、このような温湯管による暖房システムが大規模農園を中心に導入されています。日本では専用のヒーターを使うこともありますが、焼却場や温泉を利用した施設も増えてきています。

温湯管はハウスの中をくまなく配置するため、作業車のレールとして併用することを目的に導入されることがあります。お湯を通すことを目的としているため形状がコの字につながっており、作業車をレールにスムーズに乗せるためには片つばの車輪が必要になります。

片つばの車輪は世の中にありましたが、温湯管に適した大きさは削り出しで製作されていてとても高価なうえ、パイプ上を走行するには接触面が少なく、ピッタリ合うものがありませんでした。そのため、タキゲンで開発することになりました。

ー 駆動輪は鉄鋳物、駆動しない車輪はポリアミドで成形していますが、どうして材質が違うのでしょうか?

八木 開発当初、軽量化を考え駆動輪もポリアミドで試作してみましたが、合成樹脂であるポリアミドだと表面がなめらかに仕上がり、温湯管レール上をすべってしまい、駆動輪としては使用できないことが分かりました。そのため鉄鋳物での製作に切り替え、温湯管レールと適度な摩擦を発生させることに成功しました。強度はポリアミドでも問題はなく、大量生産するのであればコスト的にメリットがあるため、駆動輪は鉄鋳物で、駆動しない側はポリアミドの射出成形と、異なる材質で設計しました。

様々な用途に対応


ー どうしてゴム車輪と組合せるようにしたのでしょうか?

八木 温湯管レール用車輪の形状を変更し、パイプレール以外のところを走れるようにすることも考えましたが、地面上ではゴム車輪と比べて摩擦抵抗が少なく、初動ですべることがあるため、ゴム車輪と組合せられるようにしました。ゴム車輪と一体化しなかったのは、台車の方向変換を優先して、自在キャスターと組合せることもできるように配慮したためです。これにより様々な用途でご利用いただけるようになっています。


ー 先に商品化したパイプレール用の車輪やキャスターでは温湯管レールは走れないのでしょうか?

パイプレール用の車輪やキャスターは、パイプレールの入り口がコの字ではなく2本のパイプが平行に設置されているため、両つばで設計されています。

両つばのパイプレール用の車輪【左:K-675 右:K-674

温湯管レールから作業車を下ろさないのであれば、両つばのパイプレール用車輪を選定していただいても問題ありませんが、温湯管レールから乗り降りするのであれば、今回開発した片つばの温湯管レール用車輪を使用してください。温湯管レールは入り口がコの字になっている分、パイプレールと比べてアバウトに入りやすくなります。

大規模農園では、作業効率をアップするため加温はしないが、レールとして温湯管を使用したいという相談も増えてきました。そのため、お湯を流さない温湯管形状のレール需要を踏まえ、単管パイプレールと同様に簡単に設置ができて安価なレールシステムを開発中です。

産業分野での活用も


ー 作業車以外でも用途はあるのでしょうか?

八木 最近では農業分野でもロボットを使った自動化の研究が進んでいます。自動走行させるためにはセンサーを使うことが思いつきますが、ソフトウェアの開発などハードルが高くなります。単管パイプや温湯管をレールにすることで非常にシンプルな構成になるため、ロボット分野からの問合せが増えています。農業業界向けに開発しましたが、弊社はもともと産業用部品メーカであるため、産業界でも活躍できる場所があるのではないかと考えております。

ー 最後に八木さんが営業活動で心がけていることを教えてください。

八木 常にお客様の立場に立ち物事を考えるようにしています。弊社が農業関係の製品を取扱うようになって約10年が経過し、製品も増えてきました。生産者様により使用環境は様々なため、世の中に必要とされているが存在しないモノはまだまだたくさんあります。現場に訪問させていただきお客様の声を聞き、これからも役立つ新製品創りに携わっていきます。

製品情報

[K-673 / K-676 / K-677]温湯管レール用車輪

施設栽培暖房用の温湯管上を走行するために開発しました。

パイプ径はφ48.6〜50.8に適合。
駆動輪には頑丈な鋳物タイプK-676をご利用ください。
専用ゴム車輪K-673と組合せて使用することで、パイプ以外の場所でもスムーズに走行することができます。


仕様

【K-676】
・材  質:ねずみ鋳鉄(FC250)
・表面仕上:粉体塗装(黒色)

【K-677】
・材  質:本体 / ポリアミド(PA66)
・押え金具 : ステンレス鋼板(SUS304)
・ベアリング:高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2相当)

【K-673】
・材質:車輪 / 合成ゴム、ホイール / 溶融亜鉛めっき鋼板(SGHC)


備考

・K-676-1はK-673-200-A穴あきタイプと、K-677-1はK-673-200穴なしタイプと組合せてご利用ください。
・使用過程でパイプレール接触面の塗装が削れます。走行上問題はありません。

温湯管用車輪を使った特注品のご紹介

温湯管レール用電動低所作業車

前方が駆動輪のため、スイッチを押すと自動走行できる。自在キャスターはレール以外の場所で横に走行するために設置。

温湯管レール用収穫台車(鉄製)

レール以外の場所で方向変換できるよう、前輪の近くに自在キャスターを、後輪はゴム車輪と組合せた。

温湯管レール用軽量収穫台車(アルミ製)

中央に固定キャスターを設置することで、長い台車でも転回がスムーズに。