資源循環を情報でつなぐ サトーのサーキュラーエコノミー事業と廃棄物可視化の実証

株式会社サトーは、自動認識技術を使って資源循環の課題を解くサーキュラーエコノミー事業を進めています。対象はトレーサビリティーや回収管理など幅広いです。その一つとして、廃棄物収集容器の充填量をAI(人工知能)による画像認識で推定する実証に取組みました。排出と回収、再資源化を情報でつなぎ、再生材の品質と安定供給を支えます。


幅広い資源循環の取組み
「新しい自動認識技術の使い方やシステムを商品企画し、実用化を進めている」とサーキュラーエコノミー事業部の塩谷雄介部長は役割を説明します。サトーは2025年10月、資源循環に関わる新市場を開拓する同事業部を設けました。現在は4人で、自動認識技術を使った新たなソリューションの企画と市場展開を進めています。製品の製造と使用、回収と再資源利用までの各工程を情報でつなぐ事業部です。
従来の経済活動では、原材料を調達して製品を作り、販売するまでの「動脈側」を中心に情報管理が進んできました。一方で資源を循環させるには、使用済み製品や端材を回収し、選別や処理、再資源化する「静脈側」の情報も欠かせません。しかも、排出事業者やリサイクル事業者、再生材の利用企業と複数のプレーヤーが関わります。個社の中で閉じていた情報を、工程をまたいでつなぐ必要があります。サトーは小売業や製造業などで築いてきた顧客との接点を生かし、使用済み衣料の回収や工場から出る端材の再利用など、資源循環に関わる課題を掘り起こしています。
再生材に求められる品質と安定調達
事業を後押しするのが、循環型経済へ向けた制度整備です。欧州連合(EU)では、エコデザイン規則やデジタル製品パスポートなど、製品の原材料から流通、使用・廃棄といったライフサイクル情報の管理を求める動きが進んでいます。日本でも資源を有効活用しながら経済成長につなげる政策が打ち出されています。
資源の枯渇やリサイクルの必要性は以前から指摘されてきましたが、近年は企業が対応すべき時期や内容が具体的になってきました。塩谷部長は「製品にライフサイクル情報を付加する動きについて、事業として本格化する段階に入った」と語ります。
再生材の利用が増えるほど、使う側は品質と安定調達を重視します。塩谷部長は「バージン材と同じように、再生材にも品質管理と安定的な調達が求められています。各現場のデータを取り、利用者まで分かりやすい形で示す」と意気込んでいます。サトーは従来から、容器や資源に識別情報を付けて設置や回収、入出荷などの履歴を管理する仕組みを展開してきました。資源循環の流れを追跡できるようにすることで、再生材の信頼性や価値を支える考えです。

排出から再資源化までの工程を可視化
ID情報に状態情報を加える
サトーの強みは、バーコードや無線識別(RFID)技術を使い、モノに情報をひも付ける「タギング」です。一つひとつにIDを付け、現場のデータを収集してシステムへ渡します。サーキュラーエコノミー事業でも、このタギングが軸になります。
ただIDだけでは捉えきれない情報もあります。廃棄物を入れる容器の所在地や種類を識別できても、中身が空なのか、満杯なのかまでは分かりません。塩谷部長は「IDだけでは、現場の情報が足りない部分もある」と指摘しています。そこで画像認識やセンサーを組合せ、量や形状などの「状態情報」を取得します。「画像やセンサーなどを用途に合せて展開する。その組合せは、なかなか他社にはできない」と強調しています。
画像から廃棄物の充填量を推定
専任部署の発足に先立つ2023年8月から11月にかけて、サトーはリサイクル事業を手がけるナカダイ(東京都品川区)と、廃棄物の充填量の可視化で実証しました。リサイクル事業者にとっては、回収した廃棄物は再生材を作る原料です。しかし、排出元でいつ、どれだけ発生するかが見えにくければ、回収や処理、生産の計画を立てにくい事情も抱えています。画像から排出側の「在庫」を捉え、不安定な原料の入りを計画可能な情報へ変える試みでした。
実証では、約40平方メートルの廃棄物置き場の天井に、広角カメラ2台を設置しました。魚眼画像のゆがみをカメラ側の機能で平面に補正し、内製のAI画像認識ソフトが容器の形状を検出して充填状況を推定します。対象は「1立方メートルポリ付き」「板パレット」「鉄箱中」の3種類。充填率は0、25、50、75、100%の5段階に分類しました。

(写真:右)カメラで箱内の充填率を可視化できる
難しいのは、廃棄物の形や積み重なり方が一定ではない点です。解体した椅子の脚など長い部材が斜めに入ると、容器の上部まで達していても周囲には空間が残ります。一点の距離を測るセンサーでは満杯に近いと判断する場合がありますが、画像認識は周囲の空き具合を含めて推定できます。半面、強い日差しで中身が見えにくくなるなど、撮影環境の影響も受ける課題もありました。
精度と課題
実証では、容器検出率95%と廃棄物充填率の推定精度88%を確認しました。2台のカメラで置き場全域の充填状況を把握できました。外光で目視できない時間帯の画像は使わず、照度が足りない場所には照明が必要になるという知見も得ました。
容器の充填量が分かれば、現場担当者が置き場へ確認に行き、電話やメールで回収を依頼する負担を軽減できます。回収側も、十分にたまっていない現場への訪問を避けやすくなります。複数拠点の状態を一覧できれば、回収が必要な場所を選び、走行ルートを組むための判断材料になります。
映像を遠隔で確認するだけでも役立ちますが、対象が数百、数千カ所へ増えれば、人がすべてを見るのは難しくなります。AIで充填量を数値化することで、多数の現場を管理しやすくなります。データを蓄積すれば、廃棄物が発生しやすい時期を分析し、回収量や再資源化の生産計画へつなげる構想も描けます。
ただ、実証では回収回数や費用がどれだけ減るかまでは未検証で、配車システムや再生工場の生産計画との連携も構想段階です。カメラや設置工事、管理システムの構築には費用がかかります。技術的な有効性を事業化へつなげるには、容器のIDと充填量をひも付け、費用対効果を示す必要も見えました。
現場に合う認識手段を選ぶ
資源の状態を捉える方法は画像認識に限りません。形状が比較的安定し、上からの距離で量を測れる回収ボックスでは、距離センサーが最適な場合もあります。個体や履歴を追うにはバーコードやRFIDが力を発揮します。サトーは現場の条件や導入コストを見極め、それぞれの技術を組合せます。
こうして得た情報を排出、回収、処理、再利用の各工程でつなぐことが、サーキュラーエコノミー事業の目指す姿です。塩谷部長は今回の画像認識実証について、同事業が展開する「多様な取組みのうちの一事例」と位置付けています。
サトーが自動認識の価値として掲げるのは「正確・省力・省資源・安心・安全・環境・感動」です。モノを識別して状態を捉え、履歴をつなぐ。現場の負担を減らすとともに、再生材を安心して次の製品へ引き継ぐための情報基盤づくりが広がっています。
[日刊工業新聞社]








