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満月の夜は出産ラッシュ? 東大大学院グループがウシのお産と月齢との関係を調査

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初産より複数回のお産を経験したウシで顕著だった

満月の夜には何かが起きる。これは洋の東西を問わず、昔から言われていることです。ヨーロッパでは満月の夜に人が狼男に変身し、日本ではかぐや姫が月へ帰っていきました。もちろん伝説やおとぎ話の類いですが、人が満月の影響力を信じていたから生まれた話ではないでしょうか。月光は狂気をもたらすので注意しろ、これもヨーロッパの俗信です。

満月の夜には、出産数が増える。多くの女性は、「それ聞いたことある」と思うのではないでしょうか。本当に満月の夜に出産数が増えるか否かはまだまだ研究を待たなければならないのですが、話をウシに限れば、どうやら本当に出産数は増えるようです。

東京大学大学院の研究グループが、北海道の農場で育てられているホルスタインを対象に、3年間に自然分娩したウシの分娩(428例)と月齢との関係を調べました。すると、ウシの出産数が満月前から満月にかけて増えることが統計的に確認できたのです。その傾向は、初めてお産をするウシより複数回のお産を経験したウシで顕著だったといいます。

同研究グループは、ウシの出産数が満月に近づくと増える理由は不明で、同じことが人間の女性の場合にも当てはまるのか、それも分からないといいます。ただ判明したのは、満月に近づくにつれウシの出産数が有意的に増えたということだけです。

これは驚くべきことではないでしょうか。長く半ば俗説だと思われていたことが、まだ理由までは解明できないとはいえ、科学的アプローチで事実と確認されたわけですから。この事実だけで、満月の影響力を拡大解釈することは危険です。しかし月と生命との間には、まだまだ解明されていない不思議な関係があることは確かなようです。

大潮のころは巨大地震の発生する可能性高いと東大研究

不思議に思うのは、なぜ影響を与えるのが満月なのかということです。月は地球の周りを回わりながら新月、三日月、半月、満月と姿を変えていきますが、それは太陽の光がどう当たっているかの問題であり、月そのものの存在や質量には変わりはありません。となると、月に当たって反射する太陽の光に影響力があるのでしょうか?光でないなら、考えられるのは月の引力でしょう。新月(月が見えない状態)では地球と太陽の間に月が存在し、満月では太陽と月の間に地球があります。つまり、新月のときは太陽と月が同じ方向から地球を引き、満月ではそれぞれ反対の方向から地球を引っぱります。その引力の微妙な違いが、地球の生命に影響を与えているのかもしれません。

引力の働きだろうと推測するのは、あながち的外れではないようです。これも東京大学の研究ですが、大潮のころには巨大地震の発生する可能性が高いそうです。大潮とは、月と地球と太陽が一線上に並び、その引力で干潮と満潮の差が一番大きくなる現象です。

研究によれば、過去のマグニチュード8.2より大きい巨大地震12件のうち10件が大潮の当日、あるいはその前後に発生しているそうです。例えば、スマトラ島沖地震は大潮の当日で、東日本大震災も干満差が大きい時期に発生しました。潮位が変化すると海底を押す力も変化し、その圧力の違いが地震を起こす断層の動きに影響を与えるというのです。

地球の表面の70%が海であるように、人の体も70%が水分です。満月近くの引力の変化が人(あるいはウシ)の体内の水分を引っぱり、それが生理的あるいは精神的な働きをうながす……。そう考えるのは、もちろん素人の浅知恵かもしれませんが。