
情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
悪質なクレーマーでもお客様は神様? 〜「おもてなし大国」に、モンスター化する消費者が増えている〜
小売りや飲食などで働く人の4人に3人が悪質クレームを経験
百貨店や量販店、ホームセンター、あるいは飲食店などで、店員に暴言を吐く、執拗にクレームを続ける、常識はずれの要求をする、そんな人が増えています。
店員が大きなミスをし、それを認めないのなら抗議も納得できます。また、買った商品に破損や初期不良があるのに、店側が交換、返品に応じないのならクレームも分かります。しかし、店員が頭を下げて謝罪しているのに罵倒し続ける、時には客側の要求に無理があるのに、思うようにならないと怒って大声を出す、そんなことが少なくありません。
自分の要求が通るまで何度も同じクレームを繰り返す、「土下座して謝れ」と怒鳴る、「お前はバカだ、能無しだ、いますぐ辞めろ」と店員の人格を否定する暴言を吐く。昔はいなかったとは言いませんが、最近は急速に増えて、あちこちで迷惑行為をしています。
こうした行為を看過できなくなったのでしょう、流通や小売、外食産業などの労働組合で構成される「UAゼンセン」が、組合員に対して行なった悪質クレーム(迷惑行為)の実態調査の内容が発表されましたが、“現場”の実態は予想通りひどいものでした。
調査には50,878件の回答があり、仕事中に来店客から悪質クレーム(迷惑行為)を受けたことがある店員は73.9%。迷惑行為で一番多いのは「暴言」(27.5%)、そして「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」(16.3%)、「権威的(説教)態度」(15.2%)、「威嚇・脅迫」(14.8%)「長時間拘束」(11.1%)までが10%を超えていました。
その結果、「強いストレスを感じた」店員は53.2%、中には精神疾患になった例も359人います。しかも、“現場”では、こうしたことが日々頻繁に起きているのです。
サービス業や卸売・小売業で働く人が就業者の半分以上に
こうした悪質クレームの問題が厄介なのは、企業として対応策を決めていることが少なく、現場(多くは担当した店員)が自分たちで対応しなくてはならない点です。来店しているのだから相手はお客様、お金を払ってくれる人、となると反論することもできず、ひたすら謝る、暴言や説教に耐える、それしかできないというのが実態です。
もし反論すれば、「なんだ、その態度は、私は客だぞ」とさらにエスカレートし、場合によっては「本社に電話して、お前なんかクビにしてやる」と威嚇する例も珍しくはありません。本社が「申し訳ありません」と謝罪すれば、現場はもう抵抗できません。
企業の姿勢として「顧客第一主義」は正しいでしょう。「お客様のクレームは、商品やサービスに対する貴重なご意見」というのも間違ってはいません。しかし、そういう良識的な範疇を超えて、悪質なクレームを続ける顧客にどう対応するのか、それを明確にしている企業は、まだまだ多くはありません。
日本の産業構造をみると(内閣府のデータ)、就業者の34.2%が「サービス業」で、19.7%が「卸売・小売業」で働いています。半数以上が消費者と直接に接する仕事をし、社会は「おもてなし」を重視し、「お客様は神様」とも言われる。となると、立場上優位に立つ消費者が徐々に傲慢になり、お客さんは何を言っても、何をしても構わないという勘違いが生まれるのでしょう。しかも、“現場”では、誰もそれを止められないのですから。
日本人は本来、許すことが得意な民族です。相手の失敗も「水に流す」し、いつまでも責めません。では、なぜモンスター化する人が増えているのか、大きなテーマです。
悪質なら110番通報も
中には刑事事件になる例も
相手がお客様なら警察を呼ぶのも遠慮するでしょうが、「土下座をしろ」と迫るのは「強要罪」、胸ぐらを掴んだら「暴行罪」、大声で怒鳴り続けるなら「威力業務妨害」、筋の通らない話で金品を要求すれば「恐喝罪」などが適用されることも。110番し、被害届を出し、出入り禁止にするケースも増えている。