情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
現代人は、なぜイライラし、キレる? 〜小さな不愉快に我慢できず、すぐ爆発する傾向あり〜
平成27年の暴行犯2万5,485人、過去10年で1万人以上も増加
ささいなことでイライラする、ちょっと不愉快なことがあるとすぐキレる。電車が遅れると駅員に暴言を吐く、コンビニの店員の態度が気に入らないからと怒鳴る、自販機にお金を入れて商品が出ないとカッとなって何度も蹴る。そんな光景を見かけることが、確かに増えている。そう感じませんか。
喜怒哀楽は人間の基本的な感情ですから、怒ることが悪いわけではありません。怒るべき時にきちんと怒れないのも、また問題です。しかし「なにもそこまで……」と思うような些事で、いとも簡単に、しかも時には執拗に怒る、キレる。それも問題です。
日本民営鉄道協会の発表によると、2015年度にJRを含め駅の係員に暴行をくわえて検挙された人は792人。もちろん、警察沙汰にならない程度の暴言やら悪態などもありますから、これは氷山の一角。いわゆる「駅員にキレる」人の数は検挙数の何倍もあるでしょう。
電車の遅れや駅員の対応への不満だけでなく、切符の買い間違いなど自分の失敗で駅員にキレる人も多く、全体の約60%は酔った人ですが、シラフの人も3割ほどいます。
粗暴犯と呼ばれる暴行、傷害、脅迫、恐喝などの増減を警察庁のデータで調べると、暴行で検挙された人は平成27年に2万5,485人、平成17年の1万3,970人から大幅に増えています。刑法犯が減少するなかで、なぜ殴る、蹴るで逮捕される暴行犯が増えているのでしょう。加害者と被害者の関係を見ると、驚くことに半数以上が「面識なし」となっています。
ストレス社会でイライラしている。しかも、自己抑制が苦手で、なにかにつけて我慢できない。そんな他人同士がささいなことで衝突する姿が浮かんできます。
キレるのは他人だけではなく自分も同じ。まずその自覚をもつことから
欧米人から日本人は、「おとなしい」と言われます。たしかに諸外国ほど大規模なデモもなければ、暴動もありません。なにかにつけて寛容で、我慢強い国民性ではないでしょうか。その「おとなしい」日本人が、なぜいま簡単にキレるのでしょう。
いろいろな説があります。例えば、前頭葉の未発達。前頭葉は自己抑制や感情コントロールを司る部分で、子供のころに我慢や自己抑制が少ないとここが未発達となり、なにかにつけて我慢できない大人に育つ、という説です。パソコンやスマホを長時間使っていると、前頭葉の働きが鈍くなってくるという説もあります。
また、日本社会は全体に正確でスピーディーだから、なにもかも思うようになるのが当たり前。だから時に思うようにならないことが発生すると我慢できない、という説。
他にも、意見の多様化に納得できない人が増えている、社会のすべてに不満だらけの人が多い、いつも抑圧されている人が優位な立場になると日頃の鬱憤を晴らすかのようにキレる(例:客の立場で駅員や店員にキレる)等、諸説紛々としています。
いま、人と人がじっくり話し合い、互いに押したり引いたりする機会が減っています。むしろ話し合うのを嫌う傾向すらあります。部屋にこもって機械を相手に自己満足を続けていれば、ちょっとした不満、不愉快にすら我慢ならなくなるのも当然です。
現代人が容易にキレる原因を一元論で語るのは無理でしょう。ただささいなことに我慢できず、すぐ怒る傾向は多くの人に見られます。たぶん、あなた自身にも。それを自覚し、自分の感情をコントロールする努力をする。それが大切ではないでしょうか。
怒れる世代とは、高齢層?
増え続ける高齢者の暴行事件
平成28年版の『犯罪白書』によると、刑法犯罪で検挙された高齢者は4万7,632人。そのうち暴行と傷害は5,523人で、平成8年の約20倍にまで増えている。また駅員への暴力行為を見ると、2015年は60歳以上が全体の23.7%を占めて、年代別では一番多い。「怒れる世代」とは、若者ではなく高齢者の看板となった。