情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
笑う門には福はくるのか?心の持ち方は意外に大事と教えてくれる実験
恐怖の中で死んだバッタの死骸が土壌に悪い影響を与えた
昔から「病は気から」と言います。どれほど医学的に、また科学的に根拠のある話なのか不明ですが、多くの人は「病は気から」を何となく信じています。私たちは、溌剌として常にポジティブな生き方をしている人に病気のイメージを感じません。逆に、覇気がなく、いつもくよくよしている人からは、若々しさや健康的なイメージを受けません。
それは非科学的な単なる思い込みなのでしょうか。あるいは気持ちの持ち方と健康(肉体)の間には何らかの関連があるのでしょうか。簡単に結論を出せませんが、それを考える上でヒントになりそうな論文がアメリカの科学誌『サイエンス』に掲載されました。
論文によると、恐怖におののきながら死んだバッタの死骸は、安らかに死んだバッタの死骸とは違った影響を土壌に与える、というのです。エルサレム・ヘブライ大学と米国エール大学の共同研究で、そういう興味深いデータが得られたようです。
どんな実験なのでしょう。まずバッタだけを入れた籠と、バッタの他に捕食者であるクモを一緒に入れた籠を準備し、それらを自然の中に置きました。クモがバッタを食べないように、クモの口は糊で貼付けました。そのためバッタはクモに絡みつかれながら、食べられるという恐怖を感じつづけたのです。実験とはいえ、かなり残酷な話です。
バッタの死後、その死骸を詳しく分析すると、恐怖を感じながら死んだバッタの体内では、安らかに死んだバッタに比べて、窒素に対する炭素の割合が4%増加していました。わずか4%の差ですが、それが原因で恐怖を感じながら死んだバッタの死骸を入れた土壌では、植物性有機物(落ち葉など)の分解速度が大幅に遅くなったことも確認されています。
落語や漫才で大笑いしたら免疫力が正常値に戻った
この実験結果に間違いがないとすれば、生物の心の働きは肉体にも影響を与えると信じて良さそうです。実際、ストレスを感じつづけると胃が痛くなるのは多くの人が経験しています。極度の恐怖を覚えると短い期間に頭髪が白っぽくなる(真っ白ではないけれど)とか、顔つきがやや老けるなどの話も聞きます。ただ、それは極端ではないようです。バッタの実験でも「4%」だったように、短期間で起きる変化には限度があるはずです。
バッタの実験は悪い影響ですが、良い影響の実験結果もあります。笑いが免疫力を高める、というものです。大阪府が「笑いと健康」という小冊子で紹介しています。ガンや心臓病などの人に演芸場で落語や漫才を聞いてもらい、3時間ほどたっぷり笑ってもらう。そして笑う前と後で血液中のリンパ球の活性、つまりナチュラルキラー細胞と呼ばれるものの変化を調べると、多くの人が正常値に戻っていたというのです。
米国のジャーナリスト、ノーマン・カズンズは、同じような体験を『笑いと治癒力』で紹介しています。1960年代の半ば、膠原病にかかったカズンズはビタミンCを多く摂取しながらユーモア全集を読み、喜劇映画やコメディ番組を観て笑いつづけた。その結果、痛みが緩和され、血液に関する数値も改善し、数ヶ月後には仕事に復帰したというのです。彼は「心身の再生能力を決して過小評価してはならないことを学んだ」と書いています。
極端な精神主義は危険ですが、心の持ち方は健康にも影響すると知り、なるべくマイナス思考をしない、愚痴や文句、悪口、不平不満、泣き言を控えて、明るく前向きに生きていく。それこそが大切なのだと、これらの実験データは教えているようです。
唯物論や唯心論を超えて
心と体をトータルに扱う時代に
近代科学は、物質と精神を分け、物質を細分化し分析することで発達してきた。しかし、人間は(おそらく他の生物も)精神と肉体(物質)が一体となった存在だから、肉体と精神を同時に捉えるべきだという考えが強くなっている。「ホリスティック(全体的な)医学」などはそういう考えから生まれてきた。