
情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
ネガティブじゃなくて慎重派 −でもポジティブ派にどう対応すべきかは検討すべき−
世界と比べ、日本は明るさや希望を持つ人が少ない
コップに水が半分入っているのを見て、「まだ半分ある」と思うか、「もう半分しかない」と思うか。ポジティブ思考のタイプか否かを判断する例としてよく出されますが、どうも日本人の大半は「もう半分しかない」と考えてしまうようです。
比較的ポジティブと思われる若い世代にも、その傾向はあります。例えば、2014年版の『子ども・若者白書』には、日本を含む世界7カ国の若者たちが将来に希望を持っているかどうかを調査した結果が載っていますが、「自分の将来に明るい希望を持っているか?」との問いに、「希望がある」「どちらかと言えば希望がある」と答えた日本の若者は61.6%ですが、他の6カ国(米、英、仏、独、韓、スウェーデン)は82.4〜91.1%と高く、日本とは明確な差がありました。また「40歳になったときに幸せになっていると思うか?」の問いにも、日本の若者は66.2%、他の6カ国は81.6〜87.4%でやはり日本が離れた最下位でした。「自分には長所があるか?」の問いでも、日本が7カ国で最低でした。
大手新聞社が今春、新しく投票権を得る世代におこなったアンケートでも、いまの日本は努力しても「報われない社会だ」(56%)、「自立しにくい社会だ」(82%)という回答が目立ち、自分の将来は「明るい」は59%で、「明るくない」が30%いました。
この傾向は若者だけでなく、一般成人や知識層でも同じです。世界28カ国、33,000人を対象に世界最大のPR代理店がおこなった「2016エデルマン・トラスト・バロメーター」では、「自分の家族の状況が5年後は良くなっている」と答えた日本人は一般成人15%、知識層19%でした。世界平均は、それぞれ55%、47%ですから、かなり差があります。
遺伝子的に日本人はポジティブ思考が苦手
日本人は、それほど悲観的な国民なのでしょうか?それとも現実の日本社会が、若者にも大人にも夢や希望を持たせないのでしょうか?世界の国々と比較して、「夢も希望もない」と嘆かなければならないほど劣悪な社会だとは思えないのですが。
実は遺伝子が関係しているとの見方があります。楽観的にものを考える人は、セロトニンと呼ばれる脳内物質をたくさん分泌する遺伝子が多いのですが、日本人の90%以上はこの遺伝子が少ないというのです。なぜ、そうなったのかは不明です。ネイティブアメリカン(通称インディアン)の血液型がほぼ全員O型だという事実と同じように、日本人のセロトニン分泌遺伝子も長い歴史のなかのあれこれの結果、非常に少なくなったのでしょう。そして、なぜか欧米人にはセロトニン分泌遺伝子が多いことも分かっています。
つまり、ポジティブ思考は、もともと日本人には向いていないのです。どうしても不安材料やマイナス面が気になり、楽観的にものを考えることが苦手な国民性なのです。だから無理にポジティブ・シンキングを押し付けられても苦しくなるだけです。
しかし、それは悪いことではないはずです。そもそもポジティブとかネガティブと言いますが、言い換えれば、「脳天気」と「慎重派」かもしれません。問題点や不安材料をちゃんと考慮し、それにどう対応するかを考えて進む慎重派が日本人なのです。
しかし世界には欧米人のようなポジティブ派が多いことも事実で、だから日本人は決断が遅いとか、優柔不断、根回しが必要などと批判されます。無理にポジティブ派になる必要はないけれど、ポジティブ派にどう対応するか、それを考える必要はありますね。
心の持ちよう?
思考の分野でもW・ジェームズの法則
超常現象の研究者ウィリアム・ジェームズは、超常現象が「ある」と思って調べれば「ある」という証拠が、「ない」と思えば「ない」という証拠が出てくると説き、それをW・ジェームズの法則という。同じようにポジティブ思考とネガティブ思考、どちらがビジネスで成功率が高いか、データは分かれている。