町工場を重労働から開放! 「フォークるン」

日本には、ユニークな発想をもつ企業や、世界に誇れる技術を備えた中小企業が多数存在します。このコーナーでは、タキゲンの目線で「ちょっと面白いな!」と思ったお客様をご紹介します。

インタビュアー
名古屋⽀店 須賀

インタビュイー
代表取締役 津田様

お客様情報
株式会社津田工業様
板金加工業を営む。独自の発想力で、省力化・省人化・短納期・低コストを実現できる新しい加工技術の開発も手掛ける。

ー社名の由来と事業内容についてお聞かせください。

私の父が、津田板金工作所の屋号で自宅横の作業場で創業しました。

ハンマーとドーリー(当て板)で自動車のフロアやルーフを叩き出して創る板金職人でした。衰退する産業から少しずつ業種を変えて、平成元年に会社登記と共に株式会社津田工業となりました。

事業内容としては、エレベーターやエスカレーターの制御盤、操作盤の板金部品を、NCタレットパンチプレス※やレーザー加工機を使用して生産しています。
※鉄板に抜打ち加工、穴あけ加工をする機械

スイッチボタンや電子部品が多く取付く板金のボックスには、スタッドボルトやめねじスペーサーを金属板に取付けることが必要となります。それらのボルトを高速に取付ける「クリンチングスピードファスナー工法」を自社開発し、特許も取得しました。この技術により、中・大ロットの工業製品に対してQCDが向上しました。最近では、新たに照明器具や通信機器の板金部品も受注が増えています。

様々なアイデア商品がありますがイチオシをご紹介ください。

反転排出機能付き重量箱「フォークるン」です。
 
大容量の金属スクラップや切削屑をフォークリフトで運搬し、廃棄物処理用のコンテナ(バッカン)に反転排出できるスクラップボックスです。日々の作業や重労働を大幅に軽減できる画期的な構造になっています。

「フォークるン」の使い方

1.手前と奥のフックにフォークリフトの爪を入れて持ち上げ、コンテナ(バッカン)のヘリに仮置きしたら、奥のフックから爪を抜く

2.奥のフックから爪を外したらリフトを持ち上げる

フロントフック結合部にタキゲンの重量蝶番が使用されています!

3.反転させてスクラップを排出

4.地面に着地させると元の状態に自重で戻るように工夫されている

一連の動作はリフトのオペレーションのみで完結し、人の手を介在する必要がありません。


開発の経緯をお聞かせください。

大ロットの板金部品の加工が増えるにつれ、穴あけなどのプレス工程が増大していました。各種補助金も受け、自動化・夜間の無人運転化を推進。しかし、長時間の無人運転により、プレス抜きスクラップがコンベアに運ばれてスクラップボックスに満載になるわけですが、スクラップボックスが大きくなるにつれ、バッカンに移し替えるのが重労働で危険作業となりました。たいていは社長や役員が交代で夜間にプラ箱を入替えたり、金属スクラップで満載になったプラ箱を人力で持ち上げひっくり返したりするのが朝の日課となっていました。プラ箱をリフトの爪で持ち上げて、屋外のバッカンに移動しては放り込んでひっくり返す。そして、フックやワイヤーロープを使い、空のプラ箱を回収する。市販のダンプカートも検討していましたが、容量が少なかったり人の手を介在して箱から掻き出す作業が発生したりと、今一つ便利なものが世の中に無かったのですが、工夫や改善活動を少しずつ進めていくうちに、フォークリフトのオペレーションのみで、全く人が触る必要がない構造が見つかり製品化しました。弁理士さんに相談したところ「特許に間違いないでしょう」と助言いただき、令和4年5月に特許を取得することができました。

スクラップがたくさん入ったプラ箱

他にもこんなところに使っていただいています

ステンレス平型蝶番
エレベーターの行き先階ボタンが付いている操作盤の保守扉に使用。

高級な仕様のエレベーターで使われている鏡面仕上やヘアラインのステンレス製フェースプレートは、蝶番の組付け具合の良し悪しで保守扉の段付きや顔の映り込みのずれが発生。また、スポット溶接の加圧タイミングと通電の反りや熱ひずみで取付け公差が図面品質から外れてしまうため、溶接による組込みがある場合はとても気を遣うそうです。

今後の取組みや展望についてお聞かせください。

近隣の同業他社にもお使いいただいていますが、「フォークるン」はとても便利で、一度利用すると無くてはならないものだとのご意見をいただいています。広く世の中に広まるように、量産や販売をしていただける企業様を探しています。「フォークるン」の安全に利用できるためのリスクアセスメントのコンサルタント、および安全に対する改善と、「フォークるン」の特許使用許諾、または特許権の販売などで海外での展開をしていただける大手メーカー様のビジネスパートナーを見つけていきたいです。

津田様に聞きました

趣味は和太鼓

30歳になる頃に取引先の社長から誘われ和太鼓演奏チームに参加。経営上の悩みを聞いていただいたり、和太鼓を叩くことで気を紛らわしたりしています。

また、ユネスコ無形文化遺産に選ばれた「郡上おどり」のお囃子にも誘っていただく機会も増えました。400年続いてきた文化を学ぶことは、SDGsやBCPなどといったアカデミックなことを学ぶより、ヒントが多くあると感じます。

和太鼓には神秘的なエネルギーを感じます

感銘を受けた言葉

『満足感を常に持て』 
所ジョージさんのお父様の言葉です。感動した私は、所さんの番組に、オリジナルで作った「満足感ストラップ」を送ったところ、番組で放送していただきました。今ではレーザーカットしたエンブレムやステッカーをいろんな人にプレゼントしています。

所さんからいただいたお礼の品とお手紙は家宝です

取材のオフショット

お忙しい中、ご協力いただきありがとうございました!
タキゲンの蝶番が反転排出の衝撃をしっかり支えています
蝶番撮影中