お客様が理想としている製品、イメージしている製品を、当社が〝翻訳〞し具体化することがポイント
【役員インタビューシリーズ】
インタビューイ:タキゲン製造株式会社 情報開発部 常務取締役 情報開発部長 古岡 弘好

古岡 弘好(常務取締役)1977年入社。1988年に浦和支店長に就任し、宇都宮支店長、東京店長・本社営業部長(兼任)と歴任。2008年、常務取締役となり、2015年3月現在、常務取締役・情報開発部長。
常に技術革新を行い、高いブランド力を築いてきたのが当社の強みです
「順風満帆の時は、社員の自主性に任せるのが良い」と語る古岡弘好常務取締役。社員の育成を重んじてきた一方で、新規事業の開拓、3Dプリンターの導入では、自ら率先して働きかけてきた。「ニーズは現場にある」という力強い言葉は、まさに市場を開拓する現場重視の行動派であるという印象を受けた。
会議はさっさと終えて懇親を深める
社是として掲げていることは何でしょうか?
古岡 社是は、人材の育成です。明るく元気で、大きな声で挨拶ができる社員でいてもらいたい。何ごとにも全社員、参画意識を持って取り組むような会社を目指しています。
先代の瀧源秀昭社長はどんな経営理念を持っていたのでしょうか?
古岡 先代社長は社員、家族、協力工場さんの三位一体を唱えていました。式典もパーティーも旅行も、三位一体の考えで行ってきました。また、社員に対しては、時に「会議はさっさと終えて、懇親会をしなさい」と言って、人の和を重んじて一体感をつくっていくことの重要性を常々語っていましたね。
常に技術革新をしてきたイメージがありますが…。
古岡 今年で創業105年です。幾度となく新たな分野にチャレンジしてきました。発展の基礎は、電機業界へのハンドル・蝶番・錠前などの自社開発製品の販売です。
その後、1977年に200海里の「排他的経済水域」という概念が提唱され『漁業水域に関する暫定措置法』が施行されたのですが、先代は、これからコールドチェーンの需要が高まると考え、冷凍冷蔵庫の金具の開発と販売のPJチームを作り、冷凍冷蔵庫業界へ参入していきました。
そしてその後、特装トラック業界、通信業界、鉄道業界、自販機業界へと次々にPJチームを作り、参入していきました。電機業界にとどまらない、新たな分野へ挑戦する企業に発展していきました。そのDNAが今も受け継がれて、現在は、新規分野の太陽光架台、農業、害虫忌避製品、自然エネルギーへとチャレンジはとどまりません。
業界初のカタログ販売で需要喚起し販路を拡大
ところで、業界でいち早くカタログ販売を始めたそうですが…。
古岡 戦後、大崎・五反田周辺には、電機・機械メーカーが集まっていました。当時の電機・機械メーカーは、自社の製品で使う部品を各社がそれぞれ製作していました。生産性・革新性、ともに欠けていたことが想像できます。
そこで、当社が各社のニーズをまとめて製品化を行い、在庫を抱えて販売に乗り出しました。当時、対面販売が当たり前の中、当社は製品カタログの制作を行い、カタログ販売を試みました。このことは、各業界でまだカタログ販売という概念がない中で行われたので、業界に非常にインパクトを与え、その後の当社の永く続く成長の起爆剤となりました。
また、カタログ制作にあたり製品の規格化を行い、分かり易く機能グループごとに分けて掲載をしました。
当時、真鍮でハンドルや取手、ツマミといった製品を作っていましたが、生産性が悪く大量生産に向かないので、新しい製造方法を研究していましたところ、先代の社長が、協力工場として現在もお付き合いのある株式会社秋葉ダイカスト工業所さんと出会い、ダイカスト製法にたどり着きました。それからは、我々の製品を真鍮の砂鋳物からダイカスト製に転換していき、価格、外観、機能で飛躍をすることとなりました。
その後製品の素材は、ステンレス、樹脂、チタニウムへと進化していきました。ダイカストで作っている製品を1975年くらいにステンレスや樹脂でも作りました。2000年くらいには、同じくチタニウムでも作って在庫を持っています。
現在は、新型のボーイング機にも採用されたことで有名なカーボン(炭素繊維強化プラスチック、CFRP:carbon-fiber- reinforced plastic)での製品化を行っています。
なぜ高価なチタニウムやカーボンでの製品化を目指したかというと、まったく他社ではやっていない、業界でも試みたことがない素材でのモノづくりを、我々ならできるということを示したかったからです。タキゲンに持ち込めば、難しいものでも何とかしてくれる、というイメージ戦略です。ブランド力をより確かなものとして今後もリーディングカンパニーであり続けたいと考えています。
実際にステンレスで作った時も、チタニウムで作るときも製造技術がとても難しく、チャレンジの連続でした。今、取り組んでいるカーボンでの製品化も、とても難しく新技術の発掘に努めています。また、新技術を発掘する過程で今までお付き合いのなかった業界や企業と出会うことで、それが新しいビジネスへと繋がってきています。
お客様と改善点をその都度見つけてキャッチボール
数年前に3Dプリンターを導入しましたが?
古岡 今ではもう誰もが知るマシンとなりましたが、当時はとても高価で、その費用対効果もまだ疑われていました。そのため、機械の選定にはしっかり時間をかけ、説明も慎重に行い、数年前にやっと導入ができました。業種業態にもよりますが、現在は我々のビジネススタイルには欠かせないものとなっています。
製品化するまでの仕事の流れを教えてください。
古岡 まず、お客様のイメージ作りに役立つような製品やパンフレットを持って訪問します。そこで打ち合わせを重ねながら、その都度、試作品を持参し確認してもらいます。
こうして徐々にではありますが完成品に近づけます。この間のレスポンスはやはりできるだけ早くを心がけています。そのため、昨年竣工した本社ビルの3階には、新たに開発ラボをはじめ、各種関連機器を整備しました。
完成品に近づく度に、開発の各チームが横断的に意見を出し合います。さらに外部の意見も取り入れながら、素早くかつ完成度の高い、デザインと機能を付加して完成させるようにしています。
製品の発想やアイデアは社員からどのような形で吸い上げているのでしょうか?
古岡 アイデア提案という制度があります。時には会社からもテーマを決めて募集をします。すると、思いもよらないアイデアが出てきます。私たちは、それを現実に製品化へと導きます。また、開発依頼制度もあり、営業の目で見て「これがあったら良いな」と感じるものの機能や価格、デザインなどのアイデアを出してもらいます。
それらのアイデアを担当の各課で検討を行い、毎月開催される経営会議にて開発・設計部によるプレゼンテーションが行われ、さらなる意見を出し合い、より確実な製品へと仕上げます。
お客様が理想としている製品、イメージしている製品を、当社が〝翻訳〞し具体化することがポイントなのです
製品開発でモットーにされていることは…。
古岡 「ニーズは現場にある」ということですね。「人と違うことをやる。人より早くやる。」ということです。そして、先代社長から受け継いだ「ブランド力」を高めることを大切にしています。
【役員インタビューシリーズ】
・常務取締役 古岡 弘好【お客様が理想としている製品、イメージしている製品を、当社が〝翻訳〞し具体化することがポイント】
・取締役 田中 貢【付加価値の高い製品づくりを目指したい】
・取締役 武藤 憲一【業績が順調な時こそ一段高い品質への認識を】
・取締役 瀬川志朗【設計をする時は母親のように、試験をする時は父親のように】