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連続式シルクアイスシステム「海氷」

漁獲「量」から魚の「質」への転換で、地元漁業を衰退の危機から救う。小型漁船に搭載可能な連続式シルクアイスシステム「海氷」が漁獲物の高度な鮮度保持を可能としました。

従来の砕氷では鮮度が落ちる

漁船での漁獲物の鮮度保持方法は、真水の氷を砕いた「砕氷」の冷却が主流。しかし、冷却速度が遅くマイナス温度も保てず、さらに魚が暴れて死ぬため、魚体が傷つき傷みや鮮度の低下に繋がります。

そこで、漁業界で注目されているのが、シャーベット状の氷です。

連続式シルクアイスシステム「海氷」は、海水と同じ塩分濃度のシャーベット状の氷「シルクアイス」を生成。その粒子は数㎛〜数十㎛の細かさで、流動性もあり、魚倉の魚を隙間なく包み込むため、魚体を傷つけることなく素早く冷却することができます。長時間マイナス温度が保持できることで、鮮度保持に繋がります。「暴れ防止」と「低温保存」が同時にできることで大衆魚の付加価値になり、魚価が上昇したという声も寄せられています。

この「海氷」は元々大型で24時間かけ大量に製氷する装置でしたが、船上で自由に製氷できればもっと鮮度の良い魚を届けられると、小型漁船に搭載可能な装置が切望され、開発が始まりました。

「シルクアイス」と砕氷でのサンマの鮮度の違い
「シルクアイス」で保管したサンマは、体表の青色が保持されますが、砕氷は塩分濃度が低いため、サンマの青色が消失します。鮮度指標(K値)も「シルクアイス」のサンマの方が良好です。

「できるわけがない」と言われた漁船での製氷

開発にあたり相談した専門家は「原料の海水温の変化や船の揺れなど、不安定な船上の環境で製氷はできない」という見解でした。

しかし、ニッコーが持つ高度な機械制御と小型化の技術をベースに、外部機関から連続製氷の技術協力も得て、製氷機の内壁に付着する氷をかきとる方式により、小型漁船でも大量にシャーベット状の氷を生成できるシステムを完成させることができました。

また、貯水タンクとの循環が不要で、海水を直接汲み上げて「シルクアイス」を作り出す連続式(ワンパス)を採用。安定した温度と濃度で自由に「シルクアイス」︎を作れるようになり、洋上でも高度な鮮度維持が可能となりました。

さらに、これまでは漁獲量を予測して魚倉に大量の氷を詰込み出港していたため、燃費への悪影響や積込みの手間などがありましたが、船舶搭載型の登場で、それらの問題も解消し、性能はもちろん、イニシャルコスト・ランニングコストにも優れ、日本のみならず、海外でも評価されています。

取材協力

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