情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。
あなたも、ちょっと「内向い」てる? 〜日本は、やや「パラダイス鎖国」化しているのか〜
海外留学は中国、インドが急増、日本は10年で数万人の減少
ここ数年、日本人は「内向き志向」だと言われています。その指摘の大きな理由は、海外へ留学する若者が減り、ビジネスパーソンも海外勤務を望まなくなっている、というものです。かつて海外へ向いていた意識が衰え、国内へと閉じている、というのです。
数字を見れば、確かにその傾向はあります。日本人の海外留学は2004年がピークで、8万2,945人がアメリカを中心に世界の大学へ留学していました。それが2011年には5万7,501人にまで減っています。一方、世界を見ると、経済協力開発機構(OECD)の統計では1980年に約110万人だった全世界の留学生が、2011年には約430万人と4倍ほどに増えています。
アジアだけを見ても、2000年ごろまでは日本、中国、韓国、インドから世界へ留学する学生の数はほぼ拮抗していました。しかし、ここ10年は中国が断トツの1位(2011年は20万人以上)で、次いでインド、韓国と続き、日本は大きく離されています。
中国やインドは、かつての日本と同じく経済発展が進み、若者の意識も外へ外へと伸びている状況でしょう。一方の日本は、長く経済の低迷が続き、海外留学が就職面でマイナスに働くとも言われてきました。だから単純な比較はできないし、同じ基準で計ることもできませんが、日本人の意識が海外から国内へと移ってきたことは否定はできません。
内向きは日本だけでなく、アメリカやイギリスでも同じだ、という意見もあります。しかし英米の場合は「自国の利益を最優先する」という政治的な意志であり、いまの日本の内向きとは異なっています。日本の場合は、かつて世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)でも同様の指摘をされたように、「パラダイス鎖国」に近いように思われます。
文学も映画も、海外ものから国産へと需要がシフトしている
日本経済はアメリカ、中国に差をつけられましたが、今も世界第3位でそこそこの規模をもち、格差社会が広がりつつあるものの、国民はそれなりの豊かさ、便利さを享受しています。そして、文化面でも他国にないユニークなものがあります。ちょっと有名になった「おもてなし」や、世界的に健康食と評される和食の伝統などもその一つです。その結果、いまの日本人は昔ほど外国にあこがれを持たず、ある意味で「自足」している。そういう状況が批判的に「パラダイス鎖国」と呼ばれています。もちろん、それは日本に限った話ではなく、世界一の「パラダイス鎖国」はアメリカだとの指摘もあります。
いくつか「パラダイス鎖国」に関連する話題を紹介しましょう。まず、最近は海外文学がまったく売れないという話。明治の開国以来、日本の知識人は外国の文学作品を読んで教養を磨いてきました。しかし、最近は年間のベストセラーに外国文学が入ることは少なく(『ハリー・ポッター』シリーズぐらい)、海外文学の翻訳書は初版が1,500部程度という状況のようです。日本文学のレベルが向上した結果、でもないと思います。
映画も、邦画が押し気味です。日本映画製作者連盟のデータによると、2002年には興行収入による邦画と洋画のシェアは、邦画27.1%対洋画72.9%と洋画が圧倒していました。映画通は洋画を観るのが常識でした。しかし、2006年に邦画(53.2%)と洋画(46.8%)のシェアが逆転し、2016年には邦画63.1%に対して洋画は36.9%となっています。
自国の社会や文化に誇りと愛情を持つのは正しいことですが、現代は多様性を抜きにしては語れない時代です。自分の「内向き」度を、ちょっと点検してみてください。
究極の内向きは、お一人様?
一人の時間を大切にする独身男女
昨年の秋、某時計メーカーが休日の過ごし方について独身男女400人にアンケートを行った。すると、休日は「一人で過ごすことが多い」との答えが80%に達し、他者との関わりを好まない傾向が明らかになった。ちなみに2015年の生涯未婚率は男性23.37%、女性14.06%と過去最高。内向き、極まれり、か。