情報の面白さを、ちょっと視点を変えて眺めてみると今までと違った側面が見えてきて、時にはビジネスにも役立つ発想がわいてきたりするものです。

進むIT化、読書離れも加速する 〜ひと月の読書数0〜1冊が82%、学生の45%が読書時間「0分」〜

読書

新聞用紙の生産は25年で15%減、書店数は15年で8,800店も減

読書?スマホ? 長らく出版不況と言われています。書籍は1996年をピークに以後は売上げが低迷し、「ハリー・ポッター」シリーズや村上春樹さんの新刊本などで若干盛り返すことがあるものの、長期的には下降線をたどっています。雑誌は月刊誌も週刊誌も厳しく、ピーク時の半分ほどに売上げが落ちています。昔の朝の電車といえば、サラリーマンが新聞を半分に折って読み、学生やOLが文庫本を読んでいるのが普通でしたが、いまは誰もがスマホに熱中しています。そんな光景を毎日見ていると、もう活字の時代は終わりなのかと思います。

新聞も紙媒体は苦戦しているようです。それは製紙業界のデータからも明白で、1990年には35億7,900万トンあった新聞用紙の生産は、2015年には30億3,300万トンまで減っています。約15%の減少ですから、電車内で新聞を見かけるのが減ったのも納得できます。

書店もかなり少なくなりました。出版業界誌のデータによると、1999年には22,296店もあった全国の書店が、2015年には13,488店にまで減りました。書店業界にも、他業種と同じく、大手が巨大化して売り場面積を増やし、町の小さな店舗が閉店するという傾向があります。また小さな書店には万引きの被害で経営が苦しくなるという事情もあります。

もっとも、これらの「減少」はITによって補われている部分も多分にあります。出版業界の売上げは紙媒体を中心に発表されますが、そこに電子書籍の分を加えると、ピーク時には及ばなくとも、ここ数年に限れば微増傾向にあるともいわれます。新聞や雑誌は情報のスピードではネットに適いませんから、紙媒体からネットへと情報ツールが移行している。本の入手も、書店ではなく通販でという人が多くなっているのも事実です。

学生の読書時間は1日平均28.8分、スマホ利用は155.9分

情報量や出版数はさほど変わらず、ただ紙媒体からネットへとツールが移行しているだけなら、つまり従来は紙で読んだものをパソコンやスマホで読むだけなら、情報や文化という面からは大きな変化はないでしょう(ビジネスとしては大問題でしょうが)。

しかし、読書そのものが減少しているとなると、それは国民の知的レベルの低下に繋がるわけですから、ちょっと問題です。日本生産性本部の『レジャー白書』(2016年)によると、日本人の余暇の過ごし方では読書が4位(2015年)に挙げられていますが、果たして本当でしょうか。

まず、文化庁の調査では、1ヶ月に1冊も本を読まない人は47.5%(2013年)もいます。2002年には37.6%でしたから、10年で10%も増えたことになります。1ヶ月に1冊読むと答えた人を加えると、その割合は82%になります。つまり、いまの日本人で月に2冊以上本を読むのは、10人のうち2人もいないという寂しい現実があります。

さらに大学生協の調査(2015年、9741人が回答)では、学生の1日の読書時間は平均で28.8分しかなく、なんと「0分」と答えた学生が45.2%もいます。その一方で、スマホの利用時間は1日平均で155.9分となっています。こうした調査結果を眺めていると、余暇の過ごし方で本当に読書が4位なのか、疑わしいですね。

若い頃に文学作品などをたくさん読むことが、かつては知性を磨く基本でしたが、いまは読書そのものが衰退しているのでしょうか。そういう意味では、2016年のノーベル文学賞をボブ・ディラン氏が受賞したのは、とても象徴的なことに思えてきます。